死んでもいい

映画界でもスターであるフェラーリは様々な映画に登場しています。
その中で一番印象に残っているのはカー・レースを取り上げたものではなくロマンス映画です。
それは私が多感であった1960年代の始めに偶然に見ていたテレビで放送されていました。
 「ギリシャの大富豪の息子(アンソニー・パーキンス)が継母に恋し、
 街のショーウインドに飾られたスポーツカーを彼女にねだって買ってもらう。
 しかし所詮叶わぬ恋、失意の彼は大声で歌いながらスポーツカーで断崖のワインディングロードを疾走し、
 そのスピードが彼の限界を超えてもアクセルをゆるめずエーゲ海にジャンプする。」

40年前の記憶はかすかなもので、映画の題名すら思い出せませんでした。
しかしそのスポーツカーがフェラーリ250GTであったこととアンソニー・パーキンスが正にはまり役であったことを明確に記憶していました。
そして当時ティーンエイジャーの私は、いつかフェラーリをドライブしてみたい、素敵な年上の女性に恋してみたいと夢見ていました。

 そこで今、わずかなキーワードを頼りにインターネット検索してみました。
出典は、紀元前の詩人エウリピデスの「ヒッポリュトス」のギリシャ神話伝説で、義理の息子に恋慕の炎を燃やす王妃パイドラの話、その悲劇を現代の恋愛劇に映画化したものだそうです。


題名:Phaedra(フェードラ)
日本題「死んでもいい」

製作国:アメリカ
配給 :ユナイテッド・アーチスツ

キャスト
フェードラ(Phaedra):メリナ・メルクーリ
アレキシス(Alexis):アンソニー・パーキンス



あらすじ
 ギリシャ海運王の娘フェードラは、同じ船舶業者で竦腕のタノスと結婚した。フェードラを熱愛するタノスには、先妻との間に息子アレキシスがあった。ロンドンで経済学を勉強しているはずのアレキシスが絵筆に親しんでいるというので、フェードラが迎えに行くことになった。ロンドンの博物館でアレキシスと対面したフェードラは、ハンサムでナイーヴな、この10歳も年下の息子に一目で恋してしまい、アレキシスもまた、傲慢なまでに個性的な美しさを持つ義母に、深く魅せられるのだった。パリに飛んだその夜、憑かれたように愛の告白を口走ってしまうフェードラに、アレキシスも答えて恍惚の一夜を過ごした2人は、なおもすべてを忘れて数日を過ごした。が、所詮かなわぬ恋、アレキシスはロンドンへ、フェードラはヒドラ島の邸へ戻らねばならなかった。迎えがたいアレキシスへの恋慕と罪の意識におののくフェードラの心も知らず、タノスはアレキシスを呼び奇せた。そして、後継者として信頼を傾けるタノスは、義兄の娘エルシーとアレキシスを結びつけ両家の経済的結合をはかろうとした。若い2人の姿を見てフェードラは嫉妬に燃え上がった。父を訪ねて阻止を懇願したがそれもならなかった。絶望と怒りのフェードラは、遂にアレキシスを愛している、とタノスに告げて去った。タノスの驚きはやがて、激しい怒りに変わり、アレキシスを力の限り殴打した。すべてが終わったことを知ったフェードラは睡眠薬をあおるとベッドに横たわった。その頃、疾走するアレキシスのスポーツカーは、ハンドルを切り損ねて断崖を転がり落ちていった。宿命の恋につながれた2人の魂が昇天したのは、多分同じ時だったにちがいない。