諌早湾干拓事業について


平成9年5月14日
農林水産省構造改善局

1 諌早湾干拓事業の目的

諌早湾干拓事業は、長崎県及び地元市町等の要望に基づいて、次の目的により、昭和61年に事業着手しており、現在も事業推進への強い要望が寄せられています。

(1)生産性の高い農地の創出
 本事業は、山間地が多く平坦な農地に乏しい長崎県において、大規模で生産性の高い農地を新たに創出し、農業の振興を図るものです。

 干拓地における営農については、稲作を行うものではなく、野菜や畜産等の生産の振興を行うもので、周辺農家の増反による野菜経営と肉用牛の肥育経営及び入植による酪農経営を想定しており、野菜作では一戸当り3.0ha(干拓地2.0haの増反,既耕地1.0ha)、肉用牛肥育では一戸当り4.7ha(干拓地3.5haの増反,既耕地1.2ha)、酪農では一戸当り8.0ha(干拓地)の経営規模を予定しています。
 また,現時点の各経営の所得は、長崎県の「新農政プラン(H8作成、平成13年度目標)」における年間所得目標額が得られると見込んでいます。

 長崎県は北海道についで全国第2位の「ばれいしょ」の生産量を誇っています。
 その中でも、諌早湾周辺地域は全県の約90%の作付け面積を占めるなど、県内でも意欲的な農家が多い地域であり、本事業により、新たに創出される干拓地は、そのような農家に活用され、本地域はもとより長崎県の農業振興に寄与するものと考えています。

 また、我が国の食料事情を見ると、食料自給率は年々減少しており、現在の総合自給率は42%で、主要先進国の中でも最低となっています。
 農地面積は昭和36年の609万haから、平成8年には499万haに減少しており、最近においても、毎年、農地転用により4〜5万haの農地が減少しています。
 この状況の中、我が国の食糧自給率の維持・向上を図るためには、経営規模が大きく、生産性の高い農業を実現することが重要であり、干拓事業はその意味で重要な事業であると認識しております。

(2)災害に対する防災機能の強化
 諌早湾地域は、土地が低く、昔から高潮や洪水、排水不良の災害に度々見舞われてきていますが、潮受堤防と調整池を設けることにより、これらの災害に対する防災機能の強化を図るものです。
 具体的には、
ア 既存の海岸堤防の高さ(標高3.2〜5.7m)が低いため、周辺低平地は、これまで幾度となく高潮の被害や危険にさらされてきましたが、潮受堤防(標高7.0m)により、伊勢湾台風級の高潮に対しても安全になります。
イ 伊勢湾台風(昭和34年)級の高潮と諌早大水害時(昭和32年)の洪水が同時に発生した場合においても、潮受堤防により、高潮の影響を受けることなく、河川からの洪水を調整池に安全に流下させることができます。
ウ 潮受堤防により、潮汐に関係なく調整池へ排水ができるようになり、低平地の排水改良が図られます。

<大正以降の大きな災害>
 大正3年:高潮・洪水:約1〜3mの高潮と150mmの降雨により本明川氾濫。岸堤防1,116ヶ所、河川堤防273ヶ所決壊。家屋流出崩壊浸水2,308戸。橋流失61ヶ所。水田流出埋没4,313町。用水路破損3,625ヶ所。
 昭和2年:高潮・洪水:3mの高潮と88mmの降雨により本明川氾濫。死者57人、行方不明3名、負傷者92人。堤防決壊342件。家屋全壊1,479戸,半壊1,868戸,流出314戸,浸水13,203戸.田畑崩壊350町。
 昭和32年:洪水(諌早大水害):集中豪雨で湾沿岸の全河川氾濫。死者683人、行方不明77人、負傷者3,550人。家屋全壊2,248戸、半壊3,060戸、床上浸水12,020戸。田畑流失埋没1,389町。
 昭和57年:洪水:588mmの集中豪雨。死者3人、床上浸水917戸、床下浸水1,545戸。田の流出埋没98戸。農地流出冠水2,700ha等。
 昭和60年:高潮:2〜3mの波が津波のように堤防を越えた。桟橋被害2ヶ所。家屋床上浸水18戸、床下浸水40戸。水稲被害1,300ha。ハウス被害73棟。

2 事業実施にあたっての環境対策

本事業の実施に先立って、環境影響評価を行っています。環境影響評価は、地域住民に対する公表や説明会の開催等の手続きを経ています。
 また、環境影響評価の手続きと併せて、公有水面埋立法に基づく手続きが実施されていますが、その手続きの中で環境庁長官より、ア 環境監視(モニタリング)計画の策定、実施、公表 イ 干潟の再生促進対策 ウ 渡り鳥の広域的な視点からの追跡調査を行うこと等の意見が出されております。
 本事業は、環境庁長官の意見に対して、次のような取組みを実施するなど、適切な対応を行い、事業を実施しています。

(1)環境モニタリング
 工事の実施中は、環境影響評価の保全目標が守られるよう、水質等の環境モニタリングを実施しています。なお、その結果は、毎年、地域住民に対して公表しています。

(2)干潟の再生促進
潮受堤防前面部における干潟の再生促進を図るため、現在、調査を実施しており、事業完了までに具体的な対策を講じることとしています。
 有明海では、海岸堤防の前面に干潟が年々成長しており、佐賀県の沿岸においては、年平均で40haの干潟が増加しているとの調査結果があります。
 本事業は諌早湾の約1/3を締切るもので、事業により湾内の全ての干潟が消滅するものではありません。また、その面積は有明海全体の干潟(約20,700ha)の約7%にあたります。
 ムツゴロウは、諌早湾の残存干潟を含む有明海の泥質干潟に広く生息しており、主たる生息地は佐賀県の沿岸となっていますが、近年、その漁獲量は増加しています。また、人工ふ化の技術もほぼ確立されており、絶滅する心配はありません。

(3)野鳥の追跡調査
 有明海に生息するシギ類等の野鳥については、小型発信器の装着等による追跡調査を実施していますが、その結果によると、諌早湾の干潟を含む有明海の主な干潟間での移動は相当あることが判明しています。
 すなわち、干潟に生息するカニ類や貝類等の動物は諌早湾の残存干潟を含む有明海の干潟に豊富に生息しており、これらを餌とするシギ類等の野鳥は、そこに移動するものと考えています。
 したがって、本事業により、いずれの種も絶滅する恐れはないと考えています。


図:有明海の干潟と野鳥の移動状況


のんきの評:
 ムツゴロウは「近年は激減」していると環境庁は公式に表明している。さらに漁獲量データをあわせて見れば、官僚がいかに情報を曲げて伝えるかを国民は知る。ウソかマコトかは知らないが、参院選敗北で辞任を表明した橋本総裁に代わって、自民党総裁選挙に立候補した梶山元官房長官は「住専さえ処理すれば日本の不良債権問題は片づくという大蔵省役人の話を信じた私にも責任がある」と言っている。橋本首相の女房役の官房長官がこうだから首相も官僚の言うことを信じてしまった。「ムツゴロウは増えている」とのデンバーサミット記者会見首相発言は、やはり、農水官僚の情報操作とニセの判断に踊らされたということのようで、哀れな気もする。(1998/7/24 追記)
諌早湾干拓事業公式資料ページ
http://www.cityfujisawa.ne.jp/~559-mori/isahaya/