石は、気が遠くなるほどの長い年月を経て生成される自然の造形物であり、さまざまな種類の石がありますが、神奈川県真鶴市でしか採ることのできない本小松石は、輝石安山岩に分類される安山岩の一種です。生成過程が花崗岩とは違い、花崗岩はマグマが最初から最後まで地中でゆっくりと固まるので、岩帯としては非常に大きなものになりますが、安山岩は地表に流れ出したマグマが急に固まった物なのでその時すでに個々の形に分裂しています。 小松石は箱根火山が噴出した溶岩で、新小松石(こちらの方が生成年代は古い)、本小松石とに大別されます。本小松石は目が細かく、研磨すると独特の灰色から淡灰緑色の密な石面が現れ安山岩の中では最高級品として全国の安山岩の代名詞となっています。掘り出された状態では内部の色とは異なった茶褐色の皮に包まれており掘り出される層によっても密度も色もすべて違っています。近年では量産できなくなっておりそれだけに高級な物はわが国でも最高位にランクされる石材として希少価値を高めています。
 香川県の庵治石と同じかそれ以上、また日本の商社が輸入する中国、韓国、スウェーデン、インド等の石材より重宝されています。東の本小松石、西の庵治石と言われるほど有名ですが、それは関東での話で関西ではあまり知られていません。墓石としてが最も有名であり、古くは江戸城の城壁、近年では昭和天皇の御陵、故岡本太郎氏の墓石ほか著名人の墓石や小田原城石垣の復元等に使用されています。墓石に使う場合は棹台、上台、中台を組み合わせるので、その3つをしっかりと色合わせするのは難しく、よって値段も高額になります。
 石質は硬く、耐久性、耐火性に優れており、磨きによって表出するきめ細かな石肌、独特な色味と希少性などが特徴であり、わずかに緑がかった灰色が最上級とされています。本小松石は光にあわせて表情が変わり、屋外では太陽との調和、屋内では人工の光を受けとめ、見る者の心を落ちつかせます。時を経ることによって味が出てくる石。美しく風化し、生きている石。本小松石はまさしく生きている石と言えるでしょう。


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