国政モニター報告書 No.1





日本の国民が年間に使う医療費の総額は29兆円を超え(平成9年度)毎年1兆円ずつ増え続けている。このように医療費が突出した形で毎年伸びる状況に危惧しない国民がいるのだろうか。

3年程前、ヨーロッパの1国、ハンガリーの国家予算が丁度1兆円であることを知った。ハンガリーの1996年の人口は1,019万3千人で日本の約12分の1の人口規模である。日本の国民総医療費とハンガリーの国家予算を比較する論拠はなにもない。ただ29兆円という金額が、どれ程大きいものかが、比較によって分かりやすくなればと考えてのことである。単純に計算して日本の国民はハンガリー国民1人当りの国家予算の約2.5倍の金額を医療費のみに使っていることになる。もし医療費で比較することが可能なら、おそらく、250倍から300倍位になるのではないか。

もうひとつその異常さを示す実例がある。世界人口の2.4%にすぎない日本が世界で製造される、血液製剤の40%以上を消費している事実だ。血液製剤によるHIV感染に関わるニュースも今はないが、無理を通しても、いずれは道理が通るのである。

膨張し続ける医療費の問題も制度を変えることで抑制することは得策ではないし、効果も小さい。大切なことは本来あるべき自然な形に戻ることだと思う。それは、医療を治療医学から予防医学へ転換させることだ。

「病気になってから治すのではなく、病気にならないよう予防する」ことに、国民の意識が変っていくならば、医療費の問題をきっかけとして、厚生白書の序章にもある通り、真の「健康」と「生活の質」の向上につながるであろう。治療の前に予防、介護の前に予防、全てに優先して予防があってこそ、人間を幸せにできるし、医療費用も介護費用も生きた形で使われたことになるのではないか。