『幻のウーロン茶』


1936年、中国の吉林省で生まれた私は、父の任地に連れて、北京、瀋陽、と移り住んだ。 終戦丁度1年目の8月15日に千葉県の鋸南町にある母の実家にたどり着いた。 その時私は9歳、引き揚げが、生まれてみる2度目の日本となった。

6歳の頃には、中国人よりきれいな中国語を話すと、アマさん『中国人のメイドさん』に誉められていた私の中国語も、半世紀を過ぎると全くと言っていいほどわすれてしまっている。

不思議なことに覚えている言葉と言えば中国人の子供たちと ケンカで互いに相手をののしりあって使っているうちに何時しか覚えてしまったもので、そのいくつかはいまもって本当の意味を知らない。五十を過ぎて習い始めた中国語の先生に、この上なく下品で聞くに堪えない言葉だから、言わない方がいいと言われて以来、先生のいいつけを守っているが、たとえその言葉がどのように下品であったとしても、本当の意味を教えてくれても良いのではないかと今でも思っている。

言葉とはこのように、使わないと忘れてしまいますが、幼年時に口にした食べ物に対する味覚はなかなか忘れないもののようです。今もって忘れることのできないものがいくつかあります。

1995年に始まった私の中国訪問では折にふれ、それらの食べもの探索と確認、また新たな食材探しが旅の目的となりました。これまでのところ、日本人の中国の食材に対する一般の評価は安かろう悪かろうと言うところにあると言っていいでしょう。

しかし広大な中国のそれぞれの地方には、いい食材があります。できるだけ早いうちにいくつかを日本に持ってきたいと思っています。

表題のウーロン茶はその一つです。2001年の四月から、台湾、タイ、中国東北部、中国福建省と現地を調査するうちにいろいろなことを学びました。こうして手にすることができた『ウーロン茶』を私は『幻のウーロン茶』と言っています。

これから、中国の『質の食材』を日本に、をコンセプトに輪を広げてまいります。情報交換をご希望の方はメールでお知らせください。