「ペットと腸内細菌のおもしろい話」


 
 人間には約300種類100兆個もの腸内細菌が消化管内に棲みついている。
人間を形づくっている細胞「60兆個」を凌ぐほどの腸内細菌がただ無意味に存在することはおよそ考えられないというところからこの研究は始まっている。そして研究が進められていくうちに、たぐいまれな働きをもつ菌の発見に至った。その発見のニュースは瞬時に世界を駆け巡った。日本が世界に誇れる大発見だった。発見から20年を経過した今日でもこの菌を凌ぐ働きをもつ菌はまだ発見されていない。発見後間もなくこの菌に出会いそしてライフワークとしてきた。人間は誰もが何らかの形で社会貢献している。私はこの腸内細菌に出会って学び得たことを文章に残すことが微力ながら私ができる社会貢献ではないかといつからか思うようになった。
 
 まだ腸内細菌を学び始めの頃、どんなにいい菌でも体内に定着しないと効力を発揮できないことを知った。人間の腸内細菌は人間に最も定着する。サルにはサルの腸内細菌が。ラットにはラットの腸内細菌が定着することを知った。これまで学んできたデーターをもとに考えてみると、種が近いほど定着の割合が高くなっていくようだが、もともと人間には、人間、サルにはサル、ラットにはラットのというように本来備わっている菌の定着度が一番高い。

 
 腸内細菌の普及を始めて2年ほど経った頃、愛用者のご婦人から、家の手乗り
セキセイインコにほんの少し腸内細菌を与えたらとても元気になったという。「どんなところで元気になったことが解かりましたか?」とお尋ねしたら「いつも放し飼いなのでとびかたでその違いがわかります。ものまねが得意で声が聞き取りやすくなったのはいいのだが始終飛んできてはまとわりつくのでうるさくてしょうがない」ともいっておられたこと思い出す。

 
 もう10年ぐらい前のはなしになるだろうか、毎年9月の初旬に山梨の牧丘に会社がバスを仕立てて巨峰狩りをするのが恒例になっていた時期があった。愛用者・普及支援者を中心にバスをチャーターして実施したところ、とても喜ばれた。ときにはバス一台では間に合わず二台連ねて行ったこともあった。ちょうどそのころKさんがご自分の愛犬チワワを連れてきたことがあった。もう年齢は17歳、人間で言うと90歳以上の年齢に相当する。この愛犬チワワが半年ほど前、重い病気にかかったとき、試しに腸内細菌を与えたところ、一ヵ月ほどで奇跡的に体力が回復したという。Kさんにはお子さんがなかったのでことのほか愛犬への思い入れには、並々ならぬものがあることは私もよく知っていた。ときには愛犬のことが話題に上り、「わたくしが御茶漬けを食べていても、愛犬には高級牛肉の赤みを選んで与えているのよ」という。よほどうれしかったのだろう。バス旅行にも耐えられるようになったので、ぜひ私に見てもらいたいといって連れてこられたのだった。

 ワンちゃんの鼻の周りと背中の白髪が年齢を物語っていた。その後二年ほどして亡くなった。大型犬に比べ小型犬が長命とはいっても獣医師から他に例を見ないほどの長命といわれたといっていた。きっと愛してくれた人と一日でも長い日数を共にしたいと懸命にいきたのだろう。腸内細菌がそのお手伝いをしたのだ。


 またこんな話しもあった膣ガンだった愛猫が死の間際、食物も飲み物も全く受けつけなくなって、飼い主が困り果てて、腸内細菌を与えたところ、死力をふりしぼるようにしてそれを食べたという。自然でいいものは猫も分かるんですねと大変驚かれていたことがあった。それから、金魚や観賞用の鯉、または競走馬に密かに使いつづけたケースもあった。特殊のケースとしては肥育牛の餌料に混ぜて与えたというのもあった。細かいことは分からないが、たいていの場合感染症に対して抵抗力が増すことが特長のようだった。

 
 これまで、いくつかのペットを例としてあげた。それぞれのペットにどのようにいいか分かってもらうことが目的ではない。腸内細菌は同一種の菌の定着度が最もたかいということだった。それならどうして、人間の腸管から発見された菌が、それぞれのペットにいい結果をもたらすのか。大変疑問だった。その疑問はすぐに解けた。それは人間由来の菌でも熱水処理して死菌にしているところにその秘密があったのだ。死菌にしてあることは物質、つまりなんらかの成分になっていることだ。その物質成分がそれぞれのペットたちの腸管に達したとき、それぞれペットたちの腸内細菌が元気を持って増殖するのだ。また生菌より死菌の方が優れた働きをもつことを明らかにしたことも大きな発見なのだ。死菌にしたことで、その働きが腸管内にとどまらず血管内に入ってゆくことができるからこそこの腸内細菌がたぐいまれといわれる所以ではないだろうか。