『山里紅』『シャンリーホン』のこと


   
山里紅は中国東北部の山間地に自生する低木で秋にビー玉ほどの実をつける。真紅で細かい白い点点が果実の表皮一面にあってなんとも愛らしい風情を持っている。

 食味は酸度が高く、ビタミンCが豊富。難点は果肉に比べ種が多いところかも知れない。よく比較されるのが山査子だ。山査子は山里紅に比べ果実も大きく加工のしやすさからかその加工品は日本でも広く知られている。

 1995年の6月ほぼ50年振りに中国のハルピンを訪れたとき、前もって中国の朋友に山里紅の自生するところを見てみたいと伝えてあったので、ハルピン市から120キロぐらい離れた尚志市をはじめいくつかの地方都市を案内してくれた。6月だったのでまだ山里紅の実は小さく、緑色の豆粒ほどのものしか見ることが出来なかった。

 再び9月に訪れる機会があったので、山里紅を現地に行って見てみたいと考えていたところ、すでに収穫期を過ぎていたのか現物を見ることは出来なかった。残念に思っていると、6月に案内をしてくれた全国農業物資供鎖協作網の常務理事の范「ファン」さんが、目の前に山里紅の乾燥片の入ったビニール袋を置いた。私の中国再訪を聞いてみずから準備したという。早速中身を確かめると、最も良い手順で乾燥されていることがすぐにわかった。

 これだけの量のものをつくるとなると、生の山里紅を10キロは使っていると、それをひとつひとつ丹念に切片にしている范さんの姿が目に浮かんでくるようで、頭が下がり胸に熱いものを感じた。

 その後、7年を経過した今日、いまだに製品化に至っていないが、この経済性を持たない山里紅を飲料や水果茶として世に送り出したいと思っている。

 『山里紅』は山里の純な香り、現代人の心を癒すなにかを持っていると・・・・・・。  今も思っている。