建築と環境・・・・・・・・・・・・・・シックハウスと地球環境                  株式会社小林敬司建築事務所

築と環境を考えること、すなわち建設資材をどのような基準で選ぶかには二つの視点がある。一つはハウスシック症候群に代表される室内環境の問題に対する視点である。もう一つは、地球温暖化、オゾン層の破壊に代表される、建設資材の製造方法など建築産業として地球環境に与える影響に対する視点である。両者は問題をとらえる視野の違いにとどまらない。室内環境によい資材でもその製造エネルギー消費が大きければ地球環境には負荷となる。一方自然環境によい資材は性能に限界があったり、高価であることも少なくない。 さらにリサイクル、省資源というもう一つの視点を加え健康によい建物はどのようなものか、建築資材選択のひとつのフィルターとして最近話題となっている 〈 Key Word 〉 をあげてみる。 また参考に 〈 厚生省のVOC濃度指針 〉 と近年の建材選択の傾向を表で示す。
最後に建築 〈
設計者の立場 〉 からこの問題をとらえる。


目次
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kaku A.建築環境 Key Word 1シックハウス
 1. シックハウス(ビルディング)症候群
 2. 化学物質過敏症
 3. VOC/揮発性有機化合物
 4. TVOC/総揮発性有機化合物
 5. 環境ホルモン

kaku B.建築環境 Key Word 2 地球温暖化・リサイクル
 1. 循環型社会基本法
 2. 建設資材リサイクル法
 3. マニフェスト/産業廃棄物管理票
 4. FRP/繊維強化プラスチック
 5. COP3

kaku C.VOC濃度指針と近年の建材選択の傾向
 1. 厚生省のVOC濃度指針


kaku D.環境によい建築資材を選ぶために
  設計者としての素材選びの考えかた



6. PRTR法/特定化学物質管理促進法
7. MSDS/化学物質安全性デターシート
8. ポリ塩化ビニール/PVC
9. ISM/壁紙の安全性を示す壁材料協会の自主基準



6. フロンと代替フロン
7. 地球環境・建築憲章
8. エコマーク
9. グリーン購入



2. 近年の建材選択の傾向


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kaku2 A. 建築環境 Key Word 1 シックハウス                                               Scroll

シック・ハウス
/ビルディング
症候群
建材に含まれるホルムアルデヒドなどの科学物質が室内空気を汚染することによって、居住者に生じる健康被害の総称。建物の高気密化・高断熱化に伴う換気不良が、近年の症例増加の一因とされている。症状は目や喉の痛み、頭痛、アレルギー、倦怠感、疲労感、睡眠障害などさまざま。心身症などを引き起こすケースも多く、化学物質過敏症につながることもある。

化学物質過敏症 微量の化学物質に接するだけで起きる過敏症状。特定の化学物質に長期間さらされて、体内の許容量を超えると発症するといわれている。症状は、自律神経失調症、睡眠障害、うつ、皮膚炎、ぜん息などがある。建材に起因する室内空気汚染や、大気汚染、食品中の残留農薬などが考えられているが、化学物質との因果関係や発症メカニズムについては未解明な部分が多い。

VOC/揮発性
有機化合物
常温で揮発しやすい有機化合物のこと。ホルムアルデヒド、トルエン、ベンゼン、キシレンなどさまざまな物質があり、吸入による頭痛やめまい,腎障害などの有害性や、発ガンの可能性が指摘されている。Volatile Organic Compoundsの略。

TVOC/総揮発性
有機化合物
複数の揮発性有機化合物(VOC)の混合物の濃度レベル。暫定目標値 400μg/m3 。Total Volatile Organic Compoundsの略。

環境ホルモン 正式名称は、外因性内分泌撹乱化学物質。人為的な原因で環境間中に排出され、人体内に入るとホルモンの働きを撹乱して、ガンや生殖機能障害をももたらす。環境省によってフタル酸エステル、ビスフェノールA、PCB、ダイオキシンなど67種類がリストアップされている。フタル酸エステルは塩ビ製品の可塑材、ビスフェノールAはポリカーボネートの主原料、PCBは1972年以前に製造された変圧器やコンデンサーに含まれる。

PRTR法 特定化学物質管理促進法(特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律)。企業が環境中に排出する環境ホルモンなど約350種類の指定化学物質の量や移動を集計し、行政が管理して情報開示する仕組み。99年7月に法制化。2001年度から排出量などの届け出が始まり、2002年度から公開される。建設業は法の範囲外で対象事業者にはならないが、塗料や接着剤などの建材メーカーは対象となる。PRTRは、Pollutant Release and Transfer Registerの略

MSDS 化学物質安全性デターシート。事業者が化学物質を含む製品を他の業者へ出荷する際に添付するシートで、製造者情報、危険有害物質の含有量、製品の取り扱い上の注意などが記されている。PRTR法では、対象業者に対してMSDSの交付が義務付けられている。Material Safety Data Seetの略。

ポリ塩化ビニール
(PVC)
壁紙、タイル、配管などさまざまな建設材料に使用されてきたが、塩素を多く含んでいるため、低温で焼却処理するとダイオキシン類の発生源となるとされる。製造時に可塑材として用いるフタル酸エステルが、環境ホルモン物質であるとされている。

ISM 壁紙の安全性を示す壁材料協会の自主基準。ホルムアルデヒドや、可塑材など環境ホルモンの疑いのある物質について、厳しい基準を定めている。基準を満たした登録工場で製造され、商品テストに合格した商品には、IMSマークの表示が認められる。IMSは、Interior Safety Materialの略。ホルムアルデヒド放散量を規制するマークとしてはこのほかにJIS、JAS、日本建材産業協会のFECマークなどがある。

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kaku2 B.建築環境 Key Word 2 地球温暖化・リサイクル                                        Scroll


循環型社会
基本法
循環型社会の形成に向けた理念を示した法律。2000年5月に第147回国会で成立した。同国会では、循環型社会基本法に加えて、建設リサイクル法、改正廃棄物処理法、改正再生紙材利用法、食品リサイクル法、グリーン購入法が成立している。

建設資材
リサイクル法
建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律。一定規模以上の解体工事や新築工事で発生するコンクリート、アスファルト、木材の3種類の資材を対象に、分別解体と再資源化を工事受注業者に義務付ける。政令で資材の分別義務が課される工事規模の下限値は、解体が延べ面積70〜100u、新築が500〜1000uとなる見込み。解体工事会社の登録制度は、2001年夏、分別解体・再資源化の義務付けは2002年夏から。

マニフェスト
(産業廃棄物
管理票)
不法投棄の防止や適正処理を目的に、産業廃棄物の排出業者が処分会社に処理を委託する時に交付する管理票。廃棄物の名称、数量、性状、運搬会社・処分会社などを記載し、排出事業者、収集運搬会社、処分会社の間で受け渡す。排出業者は伝票を保管して、報告書を都道府県などに届け出なければならない。

FRP
(繊維強化
プラスチック)
不飽和ポリエステル樹脂などの合成樹脂を、数万本のガラス繊維で強化して成型、製品化したもの。軽量で強度が高い上、耐水性に優れ成型が容易。このため、船舶や家庭用の浴槽、浄化槽等に広く使われているが、処理は困難。Fiber Reinfoced Plasticsの略。

COP3 気候変動枠組み条約代3回締約国会議。1997年12月に京都で開かれた地球温暖化に関する会議。日本は、2008年から2012年まっでの5年間平均で温室効果ガス(二酸化炭素やメタンなど)の総排出量を、1990年に比べて6%削減する目標を定めた。建築関連の二酸化炭素排出量は、日本の総排出量の36%を占める。日本建築学会は、新築建物でLCCO2の30%削減と耐用年数を3倍にすることを目指す声明を公表した。

フロンと
代替フロン
フロンは、冷媒や半導体の洗浄剤、スプレーの噴射材、クッションの発泡材などに広く使われてきた化学物質。オゾン層を破壊するガスとして、地球温暖化の原因の一つに挙げられている。オゾン層破壊効果が大きく使用が禁止されている特定フロンの代わりとして利用されているのが、代替フロン。しかし、代替フロンには二酸化炭素の数千倍から数万倍もの温暖化作用があるため、97年12月のCOP3で削減の対象になっている。

地球環境・
建築憲章
日本建築学会、日本建築士会連合会、日本建築士事務所協会連合会、日本建築家協会、建設業協会の5団体が共同して発表した憲章。1.建築物の長寿命化 2.自然共生 3.省エネルギー 4.省資源・循環 5.風土・歴史の継承性の5項目からなり、発注者、設計者、建設者、運営者、使用者の連繋を図る。

エコマーク 環境への負荷が少なく、環境保全に役立つ商品であることを表すエコラベルの一種。1989年から、環境庁の外郭団体である日本環境協会が認定している。建材のエコラベルとしてはこのほかに、ベターリビングのBL部品マーク(環境共生対応)などがある。(右Linksのページから接続)

グリーン購入 環境負荷が少ない商品やサービスを選んで購入すること。1996年には「グリーン購入ネットワーク」が発足し、商品ごとに「商品選択のための環境データベース」と「購入ガイドライン」を発表している。建築関係では、照明、エアコン、オフィス家具が定められている。

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kaku2 C.VOC濃度指針と近年の建材選択の傾向                                           Scroll


厚生省のVOC
濃度指針
揮発性有機化合物 発生源となる主な建材 室内濃度指針
ホルムアルデヒド 合板、パーチィクルボード、化粧合板、集成材、断熱材(ガラス繊維)、複合フローリング材、壁紙施工用でん粉系接着剤 0.08ppm
トルエン 木材保存剤、油性ニス、接着剤 0.07ppm
キシレン 木材保存剤、油性ペイント、樹脂塗料、油性ニス、接着剤 0.20ppm
パラジクロロベンゼン 防ダニ・防虫剤、消臭剤 0.04ppm
エチルベンゼン 有機溶剤、接着剤 0.08ppm
スチレン 発泡ポリスチレン、合成ゴムの原材料 0.05ppm
フタル酸エステル プラスチックの可塑剤 ---ppm
クロルピリホス 防蟻剤(有機リン系) 0.07ppm

建材選択の傾向
使う機会が少なくなった建材 積極的に使っている建材(代替材)
室内環境 塩ビ系クロス 60 室内環境 紙系クロス 6
揮発性物質を含む接着剤 53 無垢フローリング 60
有機溶剤を含む塗料 47 ノンホルムアルデヒド接着剤 54
E2,Fc2相当の木質ボーボや合板 42 E1、Fc1相当の木質ボードや合板 46
スレート板 33 無垢材 35
有機リン系の防虫加工を施した畳 32 E0、Fc0相当の木質ボードや合板 33
合板フローリング 21 天然系塗料 26
ロックウール 18 布系クロス 26
OSBなどの複合断熱パネル 18 天然系畳 25
グラスウール 16 コルクタイル 21
E0、Fc0相当の木質ボードや合板 7 木質繊維断熱ボード 19
E1、Fc1相当の木質ボードや合板 7 炭化コルクパネル 9
その他 7 天然系接着剤 9
地球環境 廃棄物 塩ビ製品 47 非木材紙 5
フロン発泡系断熱フォーム 46 E2、Fc2相当の木質ボードや合板 4
FRP 11 セルロースファイバー、羊毛断熱材 4
ポリカーボネート 9 その他 21
異種材の複合建材 7 地球環境 廃棄物 非フロン発泡系断熱フォーム 37
ユニットバス 5 天然系クロス 37
その他 11 廃ガラスを利用したタイル・ブロック 33
ステンレス管 28
廃木材を利用した木質ボード 18
廃PETを利用したOAフロアー 11
その他 12
専門家57人からの回答日経アーキテクチャーアンケート調査より

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kaku2 D.環境によい建物資材を選ぶために=設計者の視点


成分表
環境負荷調査書
製品がいかに環境に配慮しているかを知るために、メーカーから成分表などを含む環境負荷調査書を提出してもらう。同時に複数のメーカー価格・実績などをを調査し総合的に判断する。

適材適所 環境によい代替材料の性能上の弱点を把握し、それを補うディティールを工夫して適材適所で使う。

コストと効果 コストと効果のバランスを建て主に説明し十分な意思疎通をはかる。また自然材料においては、材料の特性に起因する築後のメンテナンスにたいして、建て主の理解を得る。

重点使用 エコ製品のコストが高い場合、滞在時間が長い居間、寝室 また障害に弱い人の部屋など重点使用の考える。一方他の部分でコストダウンを図り、建物全体の総合的予算配分をおこなう。

ライフサイクルコスト 維持管理コスト、健康管理コストなど長い目でみたライフサイクルコスト全体の低減という視点で考える。

デザイン性 エコマテリアルを在来品の代替品と捉えるのではなく、それが持つ魅力を引き出せるような新材料感覚で積極的にデザインの中に組み入れる。

流通システム 複雑な流通システムを見直し、産地・資材材生産者の中から低コストで質がよく環境によい資材を探す。

自然材料 土、木、石、紙などの自然材料のもつ魅力を再認識し、古きにさかのぼってそれら材料の使用作法を知る。

グローバルな視点 室内環境の視点のみにとどまらず、地球環境の負荷にならないか、材料生産、流通、建設、廃棄、そしてリサイクルなどグローバルな視点で判断する。

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