クイーンの定員 #021


アフリカの百万長者
An African Millionaire

グラント・アレン
Grant Allen

グラント・リチャーズ 1897年
London: Grant Richards


Grant Richards
1st Edition

南アフリカの百万長者サー・チャールズ・ヴァンドリフトが神出鬼没な怪盗クレイ大佐から金銭を騙し取られ続ける連作短編集です。粘土のように変幻自在な顔を持つことから名付けられたクレイ大佐が様々な人物に成りすましてチャールズを騙します。それら一連のペテンを騙される側から描いたユニークな作品集です。物語の語り手はチャールズの義弟であり秘書であるシーモア・ウィルブラハム・ウェントワースです。


収録短編

メキシコの千里眼
(別題:メキシコの予言者)

−The Episode of the Mexican Seer−
  チャールズたちは休暇で南仏リヴィエラを訪れていました。その滞在先のホテルで、メコシコの大千里眼と名乗る人物がいることを知ります。チャールズはその人物を自室に招き交霊会を開きます。するとその人物は次から次へとチャールズの私的な事を言い当てました。
ダイヤモンドのカフスリンクス
(別題:ダイヤのカフスボタン)

−The Episode of the Diamond Links−
  スイスを訪れていたチャールズ夫妻とシーモア夫妻は新婚旅行中の若い副牧師夫妻と出会います。ある夕食の席で、チャールズの妻アミリアは副牧師が着けているダイヤのカフスに目を奪われます。そのダイヤはアメリアが所有している首飾りのダイヤとそっくりでした。
レンブラントの肖像画
(別題:巨匠の傑作)

−The Episode of the Old Master−
  ポルペロと名乗る人物がレンブランドの絵を発見します。その絵のモデルとなった人物はヴァンドリフト家の遠い傍系親族だったため、チャールズはどうしてもその絵が欲しくなります。しかし、チャールズはポルペロがクレイ大佐である可能性を否定できませんでした。
チロルの城
−The Episode of the Tyrolean Castle−
  北イタリアのメラノを訪れていたチャールズはその街に並び建つ城の美しさに目を奪われます。自分も城を手に入れたくなったチャールズはある城を訪れ交渉を開始します。しかしその城のオーナーは自分の希望価格から少したりとも値下げしませんでした。
ドロー・ゲーム
(別題:引き分け試合)

−The Episode of the Drawn Game−
  チャールズが買付選択権を確保したアフリカの辺境地から金脈が発見されます。しかしその金脈はライバル会社が選択権を持つ土地に伸びていたため、チャールズはライバル会社と合併を企てます。
ドイツ人の教授
(別題:ドイツ人教授)

−The Episode of the German Professor−
  ドイツ人の大学教授が人工的にダイヤモンドを製造する方法を発明します。チャールズらはその人工ダイヤモンドの品質に驚き、自分たちの商売が危機に晒されていることを知ります。そして現実に株価が暴落し始め、チャールズはパニックに陥ります。
クレイ大佐の逮捕
(別題:大佐の逮捕)
−The Episode of the Arrest of the Colonel−
  チャールズは探偵を雇ってクレイ大佐の発見に全力を尽くします。探偵はチャールズと常に行動を共にし、怪しい人物が近寄ればその正体を明かそうとします。そしてある日、探偵はクレイ大佐の居場所を発見したとチャールズに報告します。
セルドン金山
−The Episode of the Seldon Gold-Mine−
  ロンドンに戻ったチャールズは山腹で岩を調べる地質学者とその妻に出会います。すぐにチャールズはクレイ大佐とその妻が変装していると察し、彼らの正体を暴こうします。そして地質学者がカツラを付けていることを突き止めます。
漆塗りの書類箱
−The Episode of the Japanned Dispatch-Box−
  クレイ大佐のペテンに疲れたチャールズは船でアメリカに旅立ちます。その際、チャールズはアメリカで投機しているビジネスの関連書類を漆塗りの箱に入れて肌身離さず持ち歩くことにしました。しかし、ある一瞬を突かれて、その箱がクレイ大佐に盗まれます。
ポーカー勝負
−The Episode of the Game of Poker−
  アメリカに滞在していたチャールズはニューヨークで上院議員のパーティに呼ばれます。チャールズはそこでカードゲームに興じ、対戦した詩人に大きく負け越します。その詩人が緊急の手紙を受け取り、妻が急病になったので帰ると告げます。
ベルティヨン法
−The Episode of the Bertillon Method−
  変装することによって外観は変わるが、真の顔は変わらない。そのことに気付いたチャールズは身許確定システムであるベルティヨン法の専門家を呼び、写真からクレイ大佐の真の顔を造らせます。そして、それによって出来た顔はチャールズが知るある人物でした。
中央刑事裁判所
−The Episode of the Old Bailey−
  クレイ大佐はついに逮捕され、裁判にかけられます。クレイ大佐は自ら弁護を行い、チャールズを被害に合わせた人物は自分ではなく別人であると主張します。そして運命の判決が下されました。


論創社
『アフリカの百万長者』(2012)松下祥子訳(論創社)収録作品
全編

『シャーロック・ホームズのライヴァルたち@』(1983)押川曠編(ハヤカワミステリ文庫)収録作品
「メキシコの予言者」

『クイーンの定員T』(1992)各務三郎編(光文社文庫)収録作品
「ダイヤのカフスボタン」

『翻訳道楽』宮澤洋司訳
「巨匠の傑作(No.17)」「チロルの城(No.18)」「引き分け試合(No.19)」「ドイツ人教授(No.20)」「大佐の逮捕(No.21)」