クイーンの定員 #035


ウジェーヌ・ヴァルモンの勝利
The Triumphs of Eugene Valmont

ロバート・バー
Robert Barr

ハースト・アンド・ブラッケット 1906年
London: Hurst and Blackett


国書刊行会

収録短編

ダイヤモンドのネックレスの謎
−The Mystery of the Five Hundred Diamonds−
  王室御用達宝石商がマリー・アントワネット王妃に売りつけたとされるダイヤのネックレスが百年ぶりに発見され、オークションにかけられることになります。フランス政府の刑事局長ウジェーヌ・ヴァルモンは、オークション会場で何らかの犯罪が行われると信じ、万全の対策を取りますが、彼の目前でネックレスが盗まれてしまいます。
シャム双生児の爆弾魔
−The Siamese Twin of a Bomb-Thrower−
 
  イギリスの議員がフランスの議会を訪問することになり、パリでパレードが予定されます。インターナショナルなアナーキスト集団がそれに反応し、パレードの最中に爆弾を投げる計画を立てます。ウジェーヌ・ヴァルモンは変装してこのアナーキスト集団にもぐりこんでおり、爆弾計画を防ぐ手段を講じます。
銀のスプーンの手がかり
−The Clue of the Silver Spoons−
  弁護士ベンサム・ギブズ氏は自宅で開いた夕食会で背広の内ポケットに入れていた二十ポンドの手形を盗まれます。この犯人探しを依頼されたウジェーヌ・ヴァルモンは、ギブズ氏の友人で夕食会に参加していたライオネル・ダクレ氏を訪ねるのですが、そこでダクレ氏は自分が犯人であるかのような言動をします。
チゼルリッグ卿の失われた遺産
(別題:遺産の隠し場)
(別題:チズルリッグ卿の遺産)
−Lord Chizelrigg's Missing Fortune−
  チゼルリック卿が亡くなり、その資産と称号を引き継ぐことになった甥はチゼリック卿が残した奇妙な手紙に戸惑います。そこには「図書室にある二枚の紙のあいだに遺産がある」とだけ書かれていたのです。甥は図書室じゅうの本を調べますが、遺産らしきものを見つけることができず、ウジェーヌ・ヴァルモンに助けを求めます。
うっかり屋協同組合
(別題:健忘症連盟)
(別題:放心家組合)
−The Absent-Minded Coterie−
  スコットランド・ヤードは硬貨偽造団を捜査しており、偽金を使っている人物を特定することに成功しますが、逮捕できるまでの証拠を揃えられずにいました。その男は定職についていないにもかかわらず、毎週金曜日には鞄いっぱいの金を銀行に預けており、そのなかに偽造銀貨が含まれていました。スコットランド・ヤードはその男だけではなく、偽金を製造している主犯まで含めて逮捕したいと考えていたのです。
幽霊の足音
−The Ghost with the Club-Foot−
  ソフィア・ブルックスはラントレムリー城で翻訳とタイプの仕事をしており、そこで知り合ったラントレムリー卿の息子と結婚します。ところがそれを知ったラントレムリー卿は息子を殴り倒して部屋に閉じ込め、ソフィアを城から追い出します。それから十年経ち、ラントレムリー卿とその執事が死んだニュースが流れ、ソフィアはウジェーヌ・ヴァルモンに自分の夫がいつ死んでどこに埋葬されたか調査を依頼します。
ワイオミング・エドの釈放
−The Liberation of Wyoming Ed−
  ダグラス・サンダーソンと名乗る男がウジェーヌ・ヴァルモンを訪れ、アメリカで刑務所に入っている息子の脱獄に手を貸して欲しいと言います。息子は列車を止めて強盗をした罪で服役しているのですが、サンダーソンは息子が無実であることを信じており、再審請求をしても不利な状況であることから、脱獄しか息子を救う方法は無いと信じていたのです。
レディ・アリシアのエメラルド
−Lady Alicia's Emeralds−
 
  レディ・アリシアの所有していたエメラルドのネックレスが盗まれます。警察は大騒ぎで捜査をしますが、二ヶ月間経っても成果が上がらず、伯父のブレア侯爵はウジェーヌ・ヴァルモンにその捜索を依頼します。ヴァルモンはレディ・アリシアと面会し、彼女も伯父もある青年を犯人とにらんでいることを明かされます。

『ウジェーヌ・ヴァルモンの勝利』(2010)平山雄一訳(国書刊行会)
全編

『名探偵登場1』(1956)編集部編(ハヤカワポケットミステリ)収録作品
「遺産の隠し場」

『シャーロック・ホームズのライヴァルたち@』(1983)押川曠編(ハヤカワミステリ文庫)収録作品
「チズルリッグ卿の遺産」

『黄金の十二』(1955)エラリイ・クイーン編(ハヤカワポケットミステリ)収録作品
「健忘症連盟」

『世界短編傑作選1』(1960)江戸川乱歩編(創元推理文庫)収録作品
「放心家組合]