クイーンの定員 #044
探偵ダゴベルトの功績と冒険
フィリップ・レクラム 1910年
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Leipzig: Philipp Reclam, Jr. 1st edition in Germany |
ハンガリー生まれのオーストリアの作家バルドゥイン・グロラーが創造した探偵ダゴベルト・トロストラーが活躍する短編集。ダゴベルトは音楽と犯罪学に興味を持ち、相当な資産をもとに悠々自適な生活を送りながら、探偵愛好家としてグルムバッハ夫妻に名推理を披露する。
収録短編
・ | 上等の葉巻 (別題:細い葉巻) -Die feinen Zigarren- |
黄麻紡績工場の所有者であり、一般建設業銀行の頭取でもあるアンドレア・グルムバッハは晩餐後に喫煙室で葉巻をくゆらすことを習慣にしていた。ある日、グルムバッハは葉巻箱のなかの葉巻が数本減っていることに気付く。晩餐の客として招かれていたダゴベルト・トロストラーはその事実に興味を持ち、葉巻が減った謎を解き明かそうとする。 | |
・ | -Der Falschspieler- |
・ | -Der große Unterschleif- |
・ | 匿名の手紙 -Anonyme Briefe- |
グルムバッハ夫妻のもとに匿名の手紙が何通も届き始める。その悪戯に不快を感じた夫妻がダゴベルトに解決を依頼すると、ダゴベルトはかつて自分が経験した似たような事件のことを話し始めた。それは皇太子夫妻に届いた百通以上もの匿名の手紙に関する事件だった。 | |
・ | ダゴベルトの不本意な旅 -Dagoberts unfreiwillige Reise- |
ダゴベルトは果物市でひとりの女性に目を奪われる。外見の美しいその女性は漁師と結婚していたが、結婚前につきあっていた前科ものの男と裏で何かを企んでいたのだった。 | |
・ | 大粒のルビー -Der große Rubin- |
オイゲン・フリーゼ男爵は親しくなった女侯爵に晩餐を招かれる。その翌朝、女侯爵の使いが男爵を訪れ、一通の手紙を渡す。その手紙には、盗んだルビーの指輪を返して欲しいと書かれていた。身に覚えのない男爵はダゴベルトに救いを求める。 | |
・ | -Der große Schmuckdiebstahl- |
・ | -Der Kasseneinbruch- |
・ | 恐ろしい手紙 -Der schreckliche Brief- |
グルムバッハ夫人の友人ケーテ・グラハト譲は室内画を買いに出かけた絵の展覧会場で古い知り合いのフェルト博士に出会う。フェルト博士はかつてグラハト譲が博士宛に書いた手紙を見せ、高額な金を強請してきた。自身の立場が危うくなったグラハト譲はダゴベルトに手紙を奪い返して欲しいと依頼する。 | |
・ | -Eine teure Depesche- |
・ | 特別な事件 -Ein sonderbarer Fall- |
深夜、小さな路地で若い医学生の男性が殺害される。男性は頭部を鈍器で殴られて死亡しており、手には金細工の柄付き眼鏡を持っていた。警察から捜査の協力を依頼されたダゴベルトは、柄付き眼鏡が被害者のものでは無いと考え、その所有者を探し始める。 | |
・ | ダゴベルト休暇中の仕事 -Dagoberts Ferienarbeit- |
ロートホーフ村に住む青年フリードリヒ・ローデヴァルトは母親の実の両親が誰かを調べて欲しいとダゴベルトに依頼する。フリードリヒの母親は、子供に恵まれなかったある庭師夫妻がもらい子として育てていた。母親は実の両親の名と出身地を育ての親から知らされており、その地を自分で訪ねたことをダゴベルトに明かす。 | |
・ | 奇妙な跡 -Die seltsame Fährte- |
グルムバッハ夫妻が休暇を過ごしていた古城の領地管理人が森のなかで殺害される。管理人は首を絞められており、グルムバッハから預かっていた猟地の番人らの給与が奪われていた。 | |
・ | ある逮捕 -Eine Verhaftung- |
ダゴベルトはヴァイスバッハ男爵の正餐に招かれた際に、ひとりの男が招待客のシガレットケースを盗むところを目撃する。犯人は男爵の庭師で、その正体は強盗殺人犯であり、現在も家宅侵入の罪で指名手配中の男だった。 | |
・ | 公使夫人の首飾り -Das halsband der Gesandtin- |
アームストロング公使夫人が所有するダイヤモンドの首飾りが紛失する。五分前まで首飾りはテーブルの上に置かれていたことを家政婦は確認していた。警察が駆けつけ、屋敷内にいた不審な男子学生を逮捕するが、学生は首飾りのことなどは知らないと言い放つ。 | |
・ | 首相邸のレセプション -Empfang beim Ministerpräsidenten- |
首相が開催する公式なパーティーの席上で招待客の高価な所有品が次々と盗難にあう。事を荒立てたくない首相夫人はダゴベルトに調査を依頼する。ダゴベルトが注目したのは、盗みのために切断された時計の鎖の断面だった。 | |
・ | -Das geheimnisvolle Kästchen- |
・ | -Dagobert unterhält sich- |
創元推理文庫 |
『探偵ダゴベルトの功績と冒険』(2013)垂野創一郎訳(創元推理文庫)収録作品 「上等の葉巻」「大粒のルビー」「恐ろしい手紙」「特別な事件」「ダゴベルト休暇中の仕事」「ある逮捕」「公使夫人の首飾り」「首相邸のレセプション」「ダゴベルトの不本意な旅」 『世界短編傑作集2』(1961)江戸川乱歩編(創元推理文庫)収録作品 「奇妙な跡」 『HMM No.230』(1975)山田辰夫(早川書房)収録作品 「匿名の手紙」 『ROM No.121』(2004)小林晋訳(ROM)収録作品 「細い葉巻」 |