クイーンの定員 #045


四十の顔を持つ男
The Man of the Forty Faces

T(トマス)・W・ハンシュー
T. W. Hanshew

カッセル 1910年
London: Cassell


Pranava Books
Later Edition

かつて怪盗で名を馳せたハミルトン・クリークが、エイルサ・ローンと出合ったことにより改心し、その類稀な能力を探偵として活かす物語です。


収録短編

天国の門
(別題:消える男)
−The Affair of the Man Who Called Himself Hamilton Cleek−
  怪盗四十面相ことハミルトン・クリークの次なる標的は、脳研究の第一人者サー・ホレス・ワイヴァーンが長女の結婚祝いに用意した宝石の数々でした。スコットランド・ヤードのナーコム警視は大勢の警察官を引き連れて宝石の警備に当たりますが、クリークはまんまと盗み出すことに成功します。
−The Problem of the Red Crawl−
  フランス内務大臣のカルジョラック男爵は火事で自宅屋敷を失い、知人のドゥ・ラ・トゥール伯爵夫人が所有するラリュージュ城に住まいを移します。ところが、男爵はそこで火色の大蜘蛛に襲われ、国防にかかわる機密文書を盗まれてしまいます。しかし大蜘蛛は文書の半分しか盗むことができず、残り半分を奪おうと男爵を再襲撃しますが、クリークがそれを先回りします。
−The Riddle of teh Scared Son−
  エイルサ・ローンが家庭教師をしているチェスプトウ伯爵夫人の幼い息子の命が何者かに狙われます。故チェスプトウ伯爵はかつてセイロンで働く軍人で、現地の仏教徒と対立したこともありましたが、後に和解し、一年半後に熱病で亡くなります。伯爵亡き後、仏教徒は伯爵の息子を敬ってきていましたが、何かの原因で再び憎しみが沸き起こり、息子を狙っているのではと伯爵夫人は考えていました。
−The Caliph's Daughter−
  イスラム社会の権力者で大富豪のカリフ・アル・ハーミド・スライマンは死後、自分のミイラを棺におさめ、娘ジリカのもとに送らせます。また、娘ジリカ用として、棺をもうひとつ送ります。ジリカには魔術師の夫がいましたが、夫は行方不明となり、ジリカは父親の棺の前で祈り続ける日々を送ります。
−The Riddle of the Ninth Finger−
  青年フィリップ・ボードリーは父親が再婚相手の若い妻に殺されそうだとクリークとナーコム警視に訴えます。フィリップの父マイケル・ボードリー氏はジャワ島で出会った妻とその昔の恋人らしき男性に毒殺を企てられていると言うのです。クリークとナーコム警視は早速ボードリー家に入り、ボードリー氏がジャワ島で集めたコレクションのなかから九本指の男の骸骨を発見します。
−The Wizard's Belt−
  結婚式を目前に控えた青年ジョージ・カーボーイズが箱に入って送られてきた青いベルトをしめて寝室に入った後、忽然と姿を消します。ジョージがベッドに寝た形跡はなく、床の真ん中に青いベルトが落ちていました。
−The Riddle of the 5:28−
  ロンドン橋を5時28分に出発した列車の一等客室でひとりの男性が拳銃で殺害されます。列車は出発してから事件が発覚するまで一度も停車しておらず、列車内に犯人の姿は全く見当たりませんでした。
ライオンの微笑
−The Lion's Smile−
  ロイヤル・ベルギー・サーカス団では、ライオンの口のなかに団員が頭を入れるショーをしていましたが、ある日、そのライオンが頭を入れてきた飼い主の息子を噛み殺してしまいます。ライオンは生まれた時からサーカス団と暮らし育てられ、飼い主には絶対的に忠実でした。突然のライオンの異常行動に何かの陰謀が隠されていると考えた飼い主の娘とその婚約者がクリークに相談を持ち掛けます。
鋼鉄の部屋の秘密
−The Mystery of the Steel Room−
  近日開催されるダービーの本命馬ブラック・ライオット号の厩舎が何者かに襲われ、ひとりの馬丁が殺害され、ひとりが重体になります。厩舎は全ての窓と扉の前に男四人が見張りに立ち、なかで馬丁が張り番をしていたのですが、犯人は見張りに見られずに厩舎のなかに出入りし、馬丁を殺害していました。
−The Riddle of the Siva Stones−
  かつてヒンズー教寺院のシヴァ像の眼に飾られていたピンクのダイヤモンドは、現在ヘザーランド公爵夫人所有の宝石となっていました。その公爵夫人が密室のなかで殺害され、ピンクのダイヤモンドが盗まれます。 
四十面相のクリーク
−The Divided House−
  ブライドウェル陸軍中尉は、父親が「食べられている」という表現を使って、何者かに殺されかけていると訴えます。中尉の父親の体は腐敗しているようで、既に指を三本失っており、このままでは手や腕までも切断せざるを得ないと医師は言います。
虹の真珠
−The Riddle of the Rainbow Pearl−
  モーラヴァニア王国ではウルリック王の戴冠式の準備が進められていました。しかし王冠についている至宝”虹の真珠”は偽物で、本物はロシア人女性マダム・チャルノヴェトスキの手にありました。マダムは”虹の真珠”と引き換えに王妃の座を要求します。

『シャーロック・ホームズのライヴァルたちA』(1983)押川曠編(ハヤカワミステリ文庫)収録作品
「ライオンの微笑」

『別冊宝石73号』(1958)収録作品
「鋼鉄の部屋の秘密」

『小説推理73-5』(1973)収録作品
「四十面相のクリーク」

『名探偵登場3』(1956)編集部編(ハヤカワ・ポケットミステリ)収録作品
「虹の真珠」