クイーンの定員 #052


歌う白骨
The Singing Bone

R(リチャード)・オースチン・フリーマン
Richard Austin Freeman

ホッダー&スタウトン 1912年
London: Hodder and Stoughton


Hodder and Stoughton
1st edition

フリーマンが倒叙という新しい手法を確立した記念すべき短編集です。ワトスン役のジャーヴィス医師と共にソーンダイク博士が緻密な捜査を基に難事件を解決します。読者は犯人を知った上で博士の推理を楽しむ訳です。 


収録短編

オスカー・ブロズキー事件
−The Case of Oscar Brodski−
 −T The Mechanism of Crime−
 −U The Mechanism of Detection−
ダイヤモンドを職とする男の家へオスカー・ブロズキーという有名なダイヤモンド商人が偶然に道を訪ねてくる。一時的精神の錯乱を伴い、男はブロズキーを殺しダイヤモンドを手に入れる。死因を列車事故に見せかけた男の仕掛けをソーンダイク博士は見事に見破った。実話をモデルにした歴史的倒叙物の傑作。
計画殺人事件
−A Case of Premeditation−
 −T The Elimination of Mr. Pratt−
 −U Rival Sleuth-Hounds−
刑務所から逃亡していた男が元看守に発見され恐喝される。秘密をばらされたくない逃亡者は看守を殺すために数々の品を買い完璧な殺害計画を立て待ち合わせの場所へと向かった。犬の習性をうまく利用した倒叙物で、ソーンダイク博士の論理的推理が圧巻です。
歌う白骨
−The Echo of a Mutiny−
 −T Death on the Girdler−
 −U 'The Singing Bone'−
過去に人を殺し、逃亡の果てに灯台の守をしている男がいた。そこへ過去の殺人を知り、自分だけ罪から逃れようとしていた別の男が偶然に現われる。灯台守の男は怨みを晴らすため裏切り者を海へ突き落とした。パイプを手掛りに犯人を突き止める倒叙物です。
おちぶれた紳士のロマンス
−A Wastrel's Romance−
 −T The Spinster's Guest−
 −U Munera Pulveris−
金目の物を目当てにしている男がダンスパーティーへ乗り込んだ。そこで昔恋に落ちた女性と偶然に再会する。男は昔話をしようと持ち掛けながら、女性の口に綿を当て殺そうとした。犯行動機が甘いためミステリとしては中途半端な感じがします。
前科者
−The Old Lag−
 −T The Changed Immutable−
 −U The Ship of the Desert−
前科者の男が殺人の罪で逮捕されようとしていた。ソーンダイク博士は無実の罪を訴えるその男を信じ、見事な推理でそれを証明し、かつ真犯人を突き止める。前半の無実の証明、後半の真相究明と短編をさらに2分割し、おもしろくしている点が気に入りました。

『ソーンダイク博士の事件簿』(1977)大久保康雄訳(創元推理文庫)収録作品
「計画殺人事件」「歌う白骨」「落ちぶれた紳士のロマンス」「前科者」

『世界短編傑作集2』(1961)江戸川乱歩編(創元推理文庫)収録作品
「オスカー・ブロズキー事件」