クイーンの定員 #061


通信教育探偵ファイロ・ガッブ
Philo Gubb

エリス・パーカー・バトラー
Ellis Parker Butler

ホートン・ミフリン 1918年
Boston: Houghton Mifflin


Houghton Mifflin
1st edition

壁紙張りの仕事をしながら通信教育で探偵術を学ぶファイロ・ガッブ君。探偵としては半人前でも、なぜか結果が付いてくる。ガッブ君のだめっぷりが愛される連作短編集。


収録短編

ゆでたまご
−The Hard-Boiled Egg−
  〈日の出探偵事務所〉の探偵養成通信教育講座の受講生であるファイロ・ガッブは、同居人のクリッツ氏から詐欺の仲間に加わらないかと誘われます。最初は断っていたガッブでしたが、最後は渋々承諾し、自分の友人も詐欺の仲間に加えようとします。するとその友人はガッブに意外な事実を明かしたのです。
ペット
−The Pet−
  ガッブはサーカス団に入ったまま帰って来ないウィンターベリー氏を連れ戻す仕事を引き受けます。早速ガッブが変装をしてサーカス団に潜り込むと、サーカス団の団長は死体を使った見世物を開こうとしていました。
鷲の爪
−The Eagle's Claws−
  ガッブはメッダーブルック氏が探していたトロフィーをサーカス団から奪い返しますが、そのトロフィーをシュレッケンハイムという刺青師に再び奪われます。メッダーブルック氏は自分がシュレッケンハイムに刺青を彫ってもらった経緯を明かし、生き別れになった自分の娘を探して欲しいとガッブに頼みます。
秘密の地下牢
−The Oubliette−
  禁酒法により酒場が全部閉鎖され、酒飲みが暴れだして、四人の禁酒主義者の自宅が爆破されます。犯人は〈ぶっ壊し屋〉と呼ばれ、ガッブも〈ぶっ壊し屋〉逮捕に協力します。
にせ泥棒
−The Un-Burglars−
  何者かが他人の家に押し入り、一ダースの銀むくのスプーンをただ置いていくという奇妙な事件が連続して発生します。正義感に燃えるガッブは警察の依頼もなく被害者宅を訪れ、事件の真相を探ります。
二セント切手
−The Two-Cent Stamp−
  新聞記者のスヌークスは〈婦人禁酒連盟〉がミューレン検事を弾劾すると聞き、検事の自宅を訪れたところ、とつぜん何者かに毛布をかぶせられ、暴行を受け、最後には警察に不法侵入で逮捕されます。スヌークスは留置所を抜け出し、自分の身に何が起きたのか調べてくれとガッブに頼みます。
にわとり
−The Chicken−
  スミス夫人のにわとり小屋からめんどりが一羽盗まれます。スミス夫人から調査を依頼されたガッブは、にわとり小屋に隣接する煉瓦工場の窯のなかに隠れて、犯人が現れるのを待ちます。
ドラゴンの目
−The Dragon's Eye−
  リバーバンクで謝肉祭が開かれている最中、フィリペティ夫人がターバンに付けていた〈ドラゴンの目〉と呼ばれる巨大なルビーが盗まれます。ガッブは謝肉祭の公式探偵として雇われており、ルビーの捜索を依頼されます。
じわりじわりの殺人
−The Progressive Murder−
  ガッブの新しい探偵事務所を最初に訪れたのはガブリエル・ホステッター御大でした。御大はガッブに難事件の捜査をさせてやるから金を払えと言います。その難事件とは、御大自身が銃で撃ち殺されつつあるというものでした。
マスター氏の失踪
−The Missing Mr. Master−
  シカゴに住むカスター・マスター氏が行方不明になり、マスター氏の消息に五千ドルの賞金がかけられます。マスター氏は富豪のおじから四十五万ドルを相続したばかりで、相続に際して、ある命令の実行を求められていました。
ワッフルズとマスタード
−Waffles and Mustard−
  商法の専門家だったハッドン・オハラ氏が亡くなり、遺言状が事務所の金庫のなかから発見されます。ところが遺言状が二つあり、どちらが新しく有効かが判別つきませんでした。
名なしのにょろにょろ
−The Anonymous Wiggle−
  ペチュニア・スクロッグズ嬢のもとに奇妙な手紙が届きます。その手紙には、にょろにょろとした字で、「どの本でもいいから十四ページを開き、最初の一文読み、その通りにせよ」と書かれていました。
千の半分
−The Half of a Thousand−
  「はげの詐欺師」と呼ばれる男が現れ、オーレイ・モーヴィス判事から二十ドルを騙し取ります。次に詐欺師はガッブを訪れますが、既にガッブのもとに〈日の出探偵事務所〉から「はげの詐欺師」に関する注意喚起の手紙が届いていました。
ディーツ社製、品番七四六二<ベッシー・ジョン>
−Dietz's 7462 Bessie John−
  トウゴロイワシ号が海賊に襲われ、乗客のお金や貴金属が盗まれます。ガッブもその船に乗船しており、オパールのタイピンを盗まれました。そして翌日、ガッブは自分が雇っていた壁紙張りの助手が盗まれたタイピンを身に着けていることに気付きます。
ヘンリー
−Henry−
  三人の男性がガッブのもとを続けさまに訪れます。一人目は逃げた豚を探して欲しいと、二人目は自分が偽の霊媒師であることを顧客に明かして欲しいと、三人目は豚を逃がした男を捕まえて欲しいと、ガッブに依頼します。
埋められた骨
−Buried Bones−
  シカゴのフォクシーという名の浮浪者がガッブを訪ねます。フォクシーは、自分は探偵でボロ服を着ているのは変装だと言いながらも、ガッブに食べ物を恵んで欲しいと頼みます。
ファイロ・ガッブ最大の事件
−Philo Gubb's Greatest Case−
  梱包会社に勤めるヘンリー・スミッツ氏の遺体がミシシッピ川で発見されます。遺体は袋に詰められたうえ縫い合わされており、犯罪性が疑われました。警察はスミッツ氏を脅迫していたハーマン・ウィギンズという男を逮捕しますが、ウィギンズは容疑を否認し、ガッブに真相究明を依頼します。

針をくれ、ワトソン君!
−The Needle, Watson!−

(日本語版特別付録)
  ガッブの甥エパミノンダスが訪ねてきて探偵の弟子にしてくれと言います。ガッブが通信教育講座の教科書をエパミノンダスに渡した直後に、クインビー夫人が乱入し、泥棒に現金が盗まれたと告げます。


国書刊行会

『通信教育探偵ファイロ・ガッブ』(2012)平山雄一訳(国書刊行会)収録作品
全編

『シャーロック・ホームズのライヴァルたちB』(1984)押川曠編(ハヤカワミステリ文庫)収録作品
「ファイロ・ガッブ最大の事件」