クイーンの定員 #090


エラリー・クイーンの冒険
The Adventure of Ellery Queen

エラリイ・クイーン
Ellery Queen

フレドリック・ストークス 1934年
New York: Frederick A. Stokes


Stokes
1st Edition

収録短編
アフリカ旅商人の冒険
−The Adventure of the African Traveler−
南アフリカから帰国したばかりの男がホテルで死体となって発見される。死因は槌で頭部を殴られたことだった。エラリーは大学の講義の一環として3人の生徒を連れて現場へ駆けつける。生徒はそれぞれ独自の説を語り始めた。エラリー先生の講義に、思わず読者も生徒になるでしょう。
首つりアクロバットの冒険
−The Adventure of the Hanging Acrobat−
アクロバットを得意とする可憐な女性が、夫と共に夜間稽古をした後行方不明になり、翌日劇場でロープに吊るされた首つり死体となって発見された。近くには拳銃やナイフがあったにもかかわらず、犯人は何故首つりを選んだのか?実際に出来るかどうか別にして、とてもユニークな殺害方法です。
一ペニイ黒切手の冒険
−The Adventure of the One-Penny Black−
男が道端で暴漢に襲われ持っていた本が盗まれた。その後次々と同じ題名の本が盗まれる事件が発生し、同時に「黒の一ペニー切手」が盗難に会う事件も起きていた。盗まれたのは世界で最初にイギリスで発行された有名な切手のことです。
ひげのある女の冒険
−The Adventure of the Bearded Lady−
遺産相続でもめる一家の屋敷で、その家付きの医師が刺殺された。医師は絵を描いている最中だったらしく、右手には絵筆をにぎっていた。そしてキャンバスに描かれた女性の顎にはヒゲが描き加えられていた。エラリーの推理と言うより洞察力が光る作品。
三人のびっこの男の冒険
−The Adventure of the Three Lame Men−
銀行家の男が愛人宅から誘拐された。愛人は押し入れの中から窒息死した死体となって発見される。部屋には3組の足跡が残っていたが、不思議なことに3組とも右足をひきずるような形をしていた。不自然な状況を単純明解にする醍醐味が味わえます。
見えない恋人の冒険
−The Adventure of the Invisible Lover−
悪たれ男が殺され、町で好人物とされていた男が容疑者として捕まる。二人は一人の女性をめぐり口論しがちな仲だった。被害者の体内からは容疑者が持っていた拳銃の弾が見つかり、容疑は揺るぎ無いものとなりつつあった。仕掛けは単純、動機が見せ場。
チークのたばこ入れの冒険
−The Adventure of the Teakwood Case−
アパートの一室で見知らぬ男が殺された。被害者はその部屋の住人の弟で、所持品の中で煙草入れだけが消失していた。後に帰宅した兄だったが、エラリー達が席をはずした数分間の間に殺されてしまう。そして兄のポケットには弟の煙草入れが入っていた。犯人の名が最後の一行に書かれる美学です。
双頭の犬の冒険
−The Adventure of the "Two-Headed Dog"−
エラリー・クイーンが立ち寄った旅館で以前事件があった。宝石泥棒と思われる男が宿泊し、それを聞きつけた探偵が踏み込むと、男は跡形もなく消え去り、連れていた犬が頭を割られて死んでいたというのだ。その部屋は今でも不思議な声がするという。そしてその晩その部屋に宿泊していた金物販売人の男が悲鳴とともに死んでいた。スリラー仕立ての雰囲気ある作品です。
ガラスの丸天井付き時計の 冒険
−The Adventure of the Glass-Domed Clock−
骨董店の店主が重い文鎮で殴り殺された。この店主は死ぬ直前に犯人を示そうとでもしたのか、店にあった紫水晶とガラスの丸天井付き時計を手に握っていた。果たして二つの品が意味する人物は誰なのか?日時に関するトリックを用い、とても論理的に犯人を割り出す秀作です。
七匹の黒猫の冒険
−The Adventure of the Seven Black Cats−
エラリー宅のすぐ向かいのアパートに老姉妹が住んでいた。姉は中風で寝たきりのため、妹がいつも世話をしていた。ある日猫嫌いの姉からペットショップに黒猫を買いたいとの連絡があった。それから毎週その姉は黒猫を注文してくるようになった。不信に思ったエラリーが部屋を訪れると、何者かが逃げる音がし、部屋には誰もいなかった。見事な殺害トリックとエンデイングの美学が楽しめます。
キ印ぞろいのお茶会の冒険
(別題:いかれ帽子屋のお茶会)
−The Adventure of the Mad Tea-Party−
大の大人達が子供の誕生日パーティーで催すアリスの劇の練習をしていた。翌日、屋敷の主人が「いかれ帽子屋」の扮装のまま失踪する。「不思議の国のアリス」を題材にしたとても楽しい作品です。



創元推理文庫
『エラリー・クイーンの冒険』(1934)井上勇訳(創元推理文庫)収録作品
「キ印ぞろいのお茶会の冒険」以外の全編

『世界短編傑作集4』江戸川乱歩編(創元推理文庫)収録作品
「キ印ぞろいのお茶会の冒険」

『世界名探偵コレクション7・エラリー・クイーン』(1998)鎌田三平訳(集英社文庫)収録作品
「いかれ帽子屋のお茶会」