クイーンの定員 #097


晩餐後の物語
After-Dinner Story

ウィリアム・アイリッシュ
William Irish

J・B・リッピンコット 1942年
New York: J. B. Lippincott


Lippincott
1st edition in USA

収録短編

晩餐後の物語
−After-Dinner Story−
  乗客を乗せたエレベーターが故障し、階下まで落下する事故が発生します。この事故によりエレベーター・ボーイとひとりの若い男性が死亡します。そして警察が調べた結果、若い男性は拳銃で心臓を撃ち抜かれていたことが判明します。拳銃には男性の指紋しか付いておらず、警察は自殺と判断しますが、遺族はこれに納得できませんでした。そして一年後、死んだ男性の父親は、当時エレベーターに乗っていた乗客全員を晩餐会に招待します。
夜があばく
−The Night Reveals−
  ある夜、火災保険会社の調査員をしているハリー・ジョーダンは妻がベッドにいないことに気づきます。ハリーが家の外に出ると、妻が帰ってきて、眠れなかったので散歩していたと言います。翌日、ハリーは仕事で火災現場に入り、そこで小さな金の塊りを発見します。調べたところ、それは妻のロケットが溶けたものでした。
リンゴひとつ
−An Apple a Day−
 
  《フルーツ》と《キャッチャー》という名のふたりが宝石店から五万ドルのダイヤを盗み出します。《フルーツ》が店内でダイヤを盗み、そのダイヤをリンゴのなかに隠して窓から放り投げます。それを《キャッチャー》が受け取って逃走する予定でした。しかし、ダイヤ入りのリンゴは道路を歩いていた女性が押す乳母車のなかに入ってしまいます。《キャッチャー》はそのリンゴを奪い返すのですが、奪ったのは女性が買った普通のリンゴでした。
妄執の夜
−Marihuana−
  夜八時頃、キング・ターナーの自宅を男女三人の友人が訪れ、マリファナを吸いに行こうと誘います。ターナーは友人たちにあるアパートの一室に連れて行かれ、そこで初めてマリファナを吸います。その直後、ターナーは幻覚を見て暴れだし、その拍子に友人の女性を刺し殺してしまいます。
裏窓
−Rear window−
  部屋の窓から外の世界を眺めることが唯一の楽しみである男ジェフリーズは、ある日向かいに住む男が不審な行動をすることに気づきます。その男は寝込んでいる妻の部屋を訪ねるのが日課でしたが、その日は一度もその部屋に入ろうとしません。そして、数日後ついに男は引越しを始めす。きっとあの男は妻を殺したに違いないと思ったジェフリーズは友人の警部補に電話します。 
殺人物語
−Mureder Story−
  外出先から戻ったおれはタイプライターにむかい、タイトルだけが決まっていた殺人の物語を筋書きなしに書き始めます。それは被害者自身の手による殺人の物語でした。そしておれが原稿を書き上げた直後に届いた新聞には物語と全く同じ事件が現実に起きたことが報道されていました。

『アイリッシュ短編集1 晩餐後の物語』宇野利泰訳(創元推理文庫)収録作品
「晩餐後の物語」

『アイリッシュ短編集2 死の第三ラウンド』田中小実昌・宇野利泰訳(創元推理文庫)収録作品
「殺人物語」

『アイリッシュ短編集3 裏窓』村上博基訳(創元推理文庫)収録作品
「裏窓」

『アイリッシュ短編集5 わたしが死んだ夜』村上博基訳(創元推理文庫)収録作品
「夜があばく」「リンゴひとつ」

『見えない死』(コーネル・ウールリッチ)門野集訳(新樹社)収録作品
「妄執の夜」