クイーンの定員 #098
サム・スペードの冒険
ローレンス・E・スピヴァック 1944年
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Lawrence E. Spivak 1st Edition |
『ブラック・マスク』などの雑誌に掲載されたままになっていた作品をエラリー・クイーン自らが編んだ短編集で、三つのサム・スペイド物を含んでいます。本格とハードボイルドを融合した作風となっており、アメリカの空気も感じられます。
収録短編
・ | 赤い灯 (別題:赤い光) −Too Many Have Lived− |
ジーン・コリヤーという男性が詩人イーライ・ヘイヴンの身に何が起こったか探って欲しいとサム・スペイドのもとを訪れます。ジーンはイーライの女房に惚れており、ふたりの離婚を望んでいたのです。ところが、スペイドが調査を開始した直後、弾丸を三発打ち込まれたイーライの死体が発見されます。 | |
・ | 二度は死刑にできない (別題:死刑は一回でたくさん) −They Can Only Hang You Once− |
サム・スペイドはティモシー・ビネットとの面会を求めますが、今は会えないとの理由で甥のウォレス・ビネットが対応します。その直後、屋敷に銃声が響き、ウォレスの妻が胸を撃たれ死んでいる姿が発見されます。ティモシーも何者かに喉を締められていましたが、幸いにも一命は取り留めます。 | |
・ | スペイドという男 −A Man Called Spade− |
サム・スペイドはマックス・ブリスから「誰かに命が狙われているので助けて欲しい」と電話で言われ、すぐに彼の家に駆けつけますが、時すでに遅く、ブリスは何者かに首を締められ殺されていました。ブリスの胸には黒インキで星形が描かれ、その中心にはTの字が書かれていました。さらに机の上にブリスを脅迫している手紙が残されていました。 | |
・ | 殺人助手 −The Assistant Murderer− |
私立探偵アレグザンダー・ラッシュはある男性の訪問を受け、知人の女性が変な男に尾行されているようなので、その理由を調べて欲しいと言われます。ラッシュはすぐに調査を開始し、尾行していた男はその女性の殺害を計画していたことを突き止めます。 | |
・ | 夜陰 −Nightshade− |
停車していたセダンからひとりの女性が首をつきだし、町まで乗せていって欲しいと懇願します。他に二人の男がセダンに乗っており、そのうちの一人が車から降りてきて、女性を連れ戻そうとしますが、私の拳が一瞬早く動きます。 | |
・ | 判事の論理 −The Judge Laughed Last− |
コーヴェイ爺さんは相棒とともに深夜のカフェで現金を強奪することを繰り返し、その金で生活をしていました。ある日、二人は警察に逮捕され裁判にかけられます。幸いにも優秀な弁護士が二人につき、窃盗罪ではなく浮浪罪であると主張することで法廷は大混乱になります。 | |
・ | ああ、兄貴 −His Brother's Keeper− |
天才ボクサーのキッドは兄ローニイからボクシングを教わり、試合では負け知らずの強さを誇っていました。キッドは今度の土曜日に試合が控えており、相手は強敵でしたが、兄の教えを忠実に守れば必ず勝てると信じていました。ところが、その兄が不倫沙汰でトラブルに巻き込まれ、言動がおかしくなります。 |
『ハメット短編全集2 スペイドという男』稲葉明雄訳(創元推理文庫)収録作品 「赤い灯」「二度は死刑にできない」「スペイドという男」「殺人助手」「夜陰」「ああ、兄貴」 『名探偵登場E』編集部編(ハヤカワ・ポケットミステリ)収録作品 「殺人助手」 『EQ1978年5月号』(1978)石田善彦訳(光文社)収録作品 「判事の論理」 『クイーンの定員V』(1992)各務三郎編(光文社文庫)収録作品 「判事の論理」 講談社文庫もあり |