クイーンの定員 #115
あなたならどうしますか?
カワード・マッキャン 1957年 |
創元推理文庫 |
サスペンスの巨匠と言われたシャーロット女史が人間の深層心理を見事に描いた短編集。ほとんどの作品がEQMMのコンテストに応募され、上位入賞を果たしており、本書はフレデリック・ダネイに捧げられています。
収録短編
・ | あほうどり −The Albatross− |
夫は妻を助けるために不審な男を殴ったが、その男はその時できた傷がもとで翌日死んでしまう。夫は責任感から未亡人とその妹を自宅へ住まわせたが、妻はいつしか二人の同居人を迷惑と感じ始め、最後には嫉妬、憎しみへと変わっていった。女性同志の心理合戦が見事なサスペンス。 | |
・ | 敵 −The Enemy− |
街角で子供達が一人の男を囲み悪態をついていた。子供の一人が飼っていた犬がその男の庭で死んでおり、その男が殺したと子供達は信じていたのだ。意外な結末が待つ『黄金の13/現代篇』にも選ばれた傑作。 | |
・ | 笑っている場合ではない −Laugh It Off− |
夕食を共にしている女性が、同じレストランに入ってきた男を見て突然怯え始めた。先程殺人事件を目撃し、犯人達に自分の顔を見られたため追いかけられているのだと言う。果たして真実なのか冗談なのか。ブラック・ユーモアたっぷりのエンディング。 | |
・ | あなたならどうしますか? −What Would You Have Done?− |
ナンの従姉は一年前に前夫を飛行機事故で亡くしたが、最近立ち直ったことから幼馴染の同居人と再婚しようとしていた。そんな最中、ナンは死んだはずの従姉の前夫を目撃する。しかし家族は見間違いだと信じてくれなかった。誰からも信じてもらえず孤独な女性の心理を見事に表した表題作。 | |
・ | オール・ザ・ウェイ・ホーム −All the Way Home− |
車で人をはねたと思い、あわてて飛び降りて確認したところ、男はすでに頭を銃で撃たれ死んでいた。夫は通報しに行った妻を呼び戻し、死体を残してその場を去った。妻を見たのは通報するために寄った家の女性のみだったが、その女性が偶然にも妻の勤務先の美容院に現われた。犯人決め手のトリックが絶妙です。 | |
・ | 宵の一刻 −The Evening Hour− |
ディックとマージョリー兄妹の母マーガレットは年老いた夫婦の話相手をする仕事をしていた。その雇い主の主人が何者かに銃殺される。しかも未亡人となった夫人はマーガレットが殺したと言い残し、後を追うように死んでしまう。しかしマーガレットは無実を唱えた。年を取った者達の心情が読者の心を打ちます。 | |
・ | 生垣を隔てて −The Hedge Between− |
少女メレディス・リーは伯父から昔隣家で殺人事件があったことを聞く。酒に酔った隣家の主人が家に着いた瞬間に何者かによって背後から撃たれたらしい。興味津々のメレディスは、未亡人に生け垣越しにあれこれ聞き始めた。少女の日記を軸にした展開の妙と殺害トリックが賞賛に価します。 | |
・ | ポーキングホーン氏の十の手がかり −The Points for Mr, Polkinghorn− |
推理小説作家ポーキングホーン氏は誰もいないはずの隣家に指がのぞいているのを発見する。家主が帰ってくるまでの間に、駆けつけた警官とともにポーキングホーン氏は十個の手がかりを発見する。犯人は最近脱獄した囚人三人のうちの一人と考えられた。他の短編には見られないコミカル物です。 | |
・ | ミス・マーフィー −Miss Murphy− |
高校の事務員として働いているミス・マーフィーはある夜、姉の薬を買いに行った際、壊れた電話ボックスに閉じ込められる。電話ボックスの外には彼女の高校の生徒である不良4人組がいたが、マーフィーの声が聞こえていないのか助けてくれようとしなかった。悲劇的な余韻を残す結末がとても印象的です。 | |
・ | 死刑執行人とドライブ −Ride with the Executioner− |
カリフォルニアの小学校で銃の暴発事故があり生徒一人が死亡した。事件を知った父親は担任のイヴ・エイムズの責任だと信じ、撃ち殺すそうと彼女を探していた。偶然にも父親はイヴと会うが、イヴを校長と勘違いし、イヴの居場所へ連れて行けと命じる。死の恐怖に怯えながらのドライブはハラハラドキドキの連続です。 |
『あなたならどうしますか?』(1995)白石朗・他訳(創元推理文庫)収録作品
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