クイーンの定員 #125


九マイルは遠すぎる
The Nine Mile Walk

ハリー・ケメルマン
Harry Kemelman

G・P・パトナム 1967年
New York: G. P. Putnam


G. P. Putnam

大学の英文学教授であるニコラス・ウェルト愛称ニッキイが、元法学部教授で現郡検事の『わたし』とチェスを戦いながら、大学やその近辺で起きた事件を解き明かしていきます。 


収録短編
九マイルは遠すぎる
−The Nine Mile Walk−
「九マイルもの道を歩くのは容易じゃない、ましてや雨の中となるとなおさらだ」たったこれだけの言葉から、ニッキイ・ウェルトは驚くべき推論を行なった。著者が14年の歳月をかけて完成した不朽の名作。
わらの男
−The Straw Man−
医者の娘が誘拐され、脅迫状が送られてきた。身代金を払うことにより、人質は帰ってきたが、犯人は捕まっていなかった。脅迫状に残された指紋からニッキイが推理した結果は・・・。指紋の理由がユニーク。
10時の学者
−The Ten O'clock Scholor−
博士論文の審査試験を受ける予定の大学院の学生が、試験当日の朝自宅で撲殺死体となって発見される。当初恋愛問題かと思われたが、部屋からノートがなくなっているのをニッキイが発見し、事件は思わぬ方向へと移っていった。大学を舞台とした学園物の代表作。
エンド・プレイ
−End Play−
大学教授が自室でチェスを指していた最中に射殺される。容疑者として教授の教え子が捕まるが、明確な事件の解明はできなかった。話を聞いたニッキイは一枚の写真から真相を暴く。チェスを小道具とした秀作。
時計を二つ持つ男
−Time and Time Again−
海辺の村に住む資産家で銀行の頭取をしている男はいつも時計を2つ持ち歩いていた。それは常に時間は正確にしたいという性格からくるものだった。その男がある夜階段から落ちて死ぬ。1つの時計は壊れたが、もう1つは何故か1時間進んでいた。間接的殺人のお手本のような作品。
おしゃべり湯沸かし
−The Whistling Tea Kettle−
学会が催されるのでニッキイの住む下宿にも幾人かの客が泊りにきていた。その内の一人が美術部門で公開する予定の高価な壷の話をする。明くる日、その客の部屋から湯沸かしの蒸気の音が聞こえたことからニッキイの鋭い推理が展開する。少し強引ですがユーモラスな作品です。
ありふれた事件
−The Bread and Butter Case−
大吹雪の後の道路脇から金貸しを職業とする男の死体が発見された。数日前には死んでいたと思われるが、雪のために発見が遅れ、正確な死亡日時は断定できなかった。雪を巧みに使ったトリックが読者をうならせます。
梯子の上の男
−The Man on the Laddar−
歴史学の教授が穴に落ちて死んだ。教授は最近の著作がベストセラーになり、次作の執筆に追われていた。続いて起きる写真好きの男の梯子からの落下死。2つの事件に関連はあるのか?伏線が見事に張られた傑作です。



ハヤカワミステリ文庫

『九マイルは遠すぎる』(1976)永井淳・深町眞理子訳(ハヤカワミステリ文庫)収録作品
全編