![]() |
The Headless Lady 「首のない女」 クレイトン・ロースン 1940 ★★★ |
| 東京創元社 上野景福訳 |
奇術師マーリニの店に一人の若い女性が訪れ、奇術品の「首のない女」を今すぐ売るよう求めてきます。マーリニが申し出を断ると、女性は仕方なく店を後にしますが、その後マーリニが外出している隙に「首のない女」を持って行ってしまいます。女性がサーカス関係者だと推理したマーリニはロス・ハートと共にウォーターボロに来ていた大ハンナム合同サーカスを訪れます。そこでマーリニたちはサーカスの座長であるハンナム大佐が前夜謎の衝突事故で死亡したことを聞かされます。また「首のない女」を持って帰ったのが亡くなったハンナム大佐の娘で綱渡り師のポーリン・ハンナムであることが判明します。ところがマーリニたちの目前で、ポーリンが演劇中に落下する事故が起きてしまいます。不穏な空気を感じたマーリニは独自の調査を始めますが、マーリニの車のなかから本物の首のない女の死体が発見され、マーリニたちは警察に連行されてしまうのです。
いつしかロースンの翻訳書では最入手困難書になってしまっていますが、がんばって入手するだけの価値がある一冊です。理由も判らず持ち去られる奇術品の「首のない女」、サーカスのアトラクションとなっている「首のない女」、そして身元不明の「首のない女」の死体と、様々な「首のない女」が登場し読者の興味をそそります。そのどれもが謎めいてはいるものの、残忍さや異様さを感じさせることは無く、どちらかと言うとロボットのような無機質な物体として表現され、愛着心さえ沸きそうです。サーカス団の奇妙な人間関係に触れながら事件の謎を提示する前半、逮捕されたマーリニが二重に鍵のかけられた警察の独房から脱出するところで最高の盛り上がりを見せる中盤、ここまではとてもいいです。しかし、背後に隠れていた事件が明るみに出ることで、かえって全体を複雑にしてしまっている後半は少しいただけないです。犯人の意外性や「首のない女」が出ることの必要性が良く出来ているだけにもったいないと思います。
| 「閲覧室」へ戻る |