The Great Merlini


クレイトン・ロースン

1979

★★★

The Clue of the Tatooed Man
入れ墨の男と折れた脚
(ハヤカワ・ポケットミステリ『名探偵登場D』)

サーカス団に属する腹話術師の妻がアパートの一室で絞殺されます。部屋の外の廊下では5人の人物がサイコロ賭博に興じており、犯行時間近くに部屋に入ったのは入れ墨の入った男一人だけだと口を揃えて証言します。しかし、その入れ墨男はその時間はホテルの前にいたと主張し、マーリニも彼を目撃していたのです。数ページの短編ですが、二つの手掛かりが巧妙に隠されています。

The Clue of the Broken Leg
入れ墨の男と折れた脚
(ハヤカワ・ポケットミステリ『名探偵登場D』)

数週間前に自動車事故に会い車椅子生活を送っていた舞台演出家が拳銃で殺されます。警察は容疑者を被害者の身近な3人に絞っていましたが、彼らの証言を合わせると犯人は殺害現場から消えたとしか考えられませんでした。入れ墨男ほどではないですが、手掛かりの隠し方は巧いです。

The Clue of the Missing Motive
動機なき殺人
(ハヤカワ・ミステリ・マガジン1996年12月号)

マーリニの住む家から30mほど先の公園で、夕暮れ時に男が殺されます。男を射殺した銃がマーリニの隣人宅から見つかるのですが、隣人たちの中には男を殺す動機を持った人物がいませんでした。マーリニが考えるまでもない凡作ショート・ミステリ。

From Another World
この世の外から
(創元推理文庫『魔術ミステリ傑作選』、ハヤカワ・ミステリ文庫『密室大集合』、新潮文庫『ビッグ・アップル・ミステリー』)

超常現象に興味を持つアンドルー・ドレークは、降霊術をするために霊媒師の女性と共に書斎に入り、霊媒師には物が隠せないように水着姿にさせ、部屋は外から誰も入れないように内側から鍵をかけて隙間を紙テープで目張りをします。その鍵がかかり目張りをされた書斎でアンドルー・ドレークが刺殺され、霊媒師の女性は殴られて気を失っているのが発見されます。ロースンがジョン・ディクスン・カーとアイデアの交換をして生まれた密室物です。

Off the Face of the Earth
天外消失
(早川書房 世界ミステリ全集18『37の短編』)

収賄の疑いで警察が尾行していた判事が、とある電話ボックスに入ったのち忽然と姿を消してしまいます。電話ボックスの入り口は警察官によって見張られており、判事はこの世から消失したとしか考えられませんでした。しかも、その電話ボックスで警察官が取った受話器からは判事の声が聞こえてきたのです。ロースンの書いた最も有名な短編で、その消失トリックはミステリ史に残ると言われています。

Merlini and the Lie Detector
マーリニと嘘発見器
(EQMM1960年6月号問題編、8月号解決編)

映画・TVプロデューサーのカール・トッドが自宅書斎で殺害されます。現場にいたのは脚本家の男と主役女性の二人で、お互いに相手が犯人だと主張し合います。警察とともに現場に駆けつけたマーリニは二人の車それぞれに乗車することで、どちらが犯人か言い当てるのです。マーリニが嘘発見機として利用するものが、本当に成功するかどうか事前に悟ることは困難だと思いますが、アイデアとしてはおもしろいと思います。

Merlini and the Vanished Diamonds
消えたダイヤモンド
(EQMM1960年7月号問題編、9月号解決編)

高価なダイヤモンドが密輸されるとの情報が入り、警察がある容疑者を船のなかで監視していました。入港する前には、確かに宝石はその容疑者の船室にあったのですが、入港後税関が検査した時にはそのダイヤモンドが消え失せていたのです。容疑者が奇術師と知ったマーリニは、それを逆手に取った手段でそのトリックを見破るのです。奇術師ロースンならではのアイデアに感心させられます。

Merlini and the Sound Effects Murder
音響効果殺人事件
(EQMM1960年8月号問題編、10月号解決編)

音響効果技師の男が、音響設備の整った自室で、身体に4発の銃弾を浴びて殺害されているのが発見されます。被害者は殺害当時ラジオを録音しており、その録音テープに銃声が残っていたことから犯行時間が特定できたのですが、最後に被害者に会った女性は30分前に部屋を離れており、それから犯行時間までは誰も部屋に入っていないことが証明されていたのです。手掛かりの隠し方が絶妙です。

Nothing is Impossible
世に不可能事なし
(ハヤカワ・ミステリ文庫『密室殺人傑作選』)

今は空飛ぶ円盤に熱中している航空機設計会社の元会長が、経営を譲った婿と二人きりで部屋に入ってしばらくした後、部屋から銃声が聞こえます。鍵のかかったドアを打ち破ってマーリニたちが部屋に入ると、元会長は銃殺されており、婿は裸姿で倒れていたのです。マーリニが論理的に犯人を追い詰めます。

Miracles - All in the Day's Work
奇蹟なんぞはいつでも起る
(EQMM1959年7月号)

釣道具会社のミスター・コートニーが64階のオフィスで仕事をしている最中に一人の男が訪ねてきて、そのままコートニーの部屋に入ります。その後、コートニーが外部からの電話に一度出たきり何の音沙汰も無いことに不審を感じた秘書が部屋に入ると、コートニーはペーパー・ナイフで背中を刺されて死んでおり、訪ねてきた男は消え去っていたのです。64階の部屋からの消失という魅力的な設定を見事に実現させた佳作です。

Merlini and the Photographic Clues
マーリニと写真の謎
(ハヤカワ・ミステリ・マガジン1969年11月号)

ブロードウェイのゴシップ・コラムニストが事務所で射殺されます。犯行時間の数分後に現場のビルから出て行く姿を目撃された女優が逮捕されますが、彼女以外にも被害者に弱みを握られていた人物は数人いました。そこへニュース・カメラマンが、読心術を得意とする男が犯行時間直後にビルから出てきているとその証拠写真を持参したのです。付録の絵(オリジナルはパズル)を見て手掛かりを探すという趣向が斬新です。

The World's Smallest Locked Room
世界最小の密室
(ハヤカワ・ミステリ・マガジン1971年11月号)

レストランでコーヒーを飲んでいた劇場プロデューサーが突然トイレに駆け込み、「毒を飲まされた!」と言って失神してしまいます。被害者と同じテーブルに座っていた女優か、数分前まで同席していた劇作家か、犯人は二人のどちらかに絞られました。クレイトン・ロースンの遺作で、真っ赤なフェラーリで現場に乗り付けるマーリニがなんとも滑稽です。

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