Death out of Thin Air

「虚空から現れた死」

スチュアート・タウン


1940

★★★★
原書房
白須清美訳
Coward McCann
1st edition in USA (copy)

Death from the Past (別題:Ghost of the Undead)
過去からよみがえった死
 (蘇った殺人鬼)
(別冊宝石111号)

 奇術師ドン・ディアボロの楽屋を一人の女性が訪れ、応対に出た小間使いのチャンに対して今すぐディアボロに会わせるよう要求し、拳銃を突きつけてきます。チャンは奥の着替え室にいたディアボロに報告し、ディアボロはこの女性に会おうと着替え室を出ます。すると外の部屋では、閉めていたはずの窓が開け放たれ、一匹のコウモリがなかを舞っており、床にはその女性が喉から血を流して倒れていたのです。外の廊下にはボーイがずっと立っており、誰も出入りしなかったと証言します。部屋は五階に位置し、窓から簡単に出入りすることは不可能に思えました。そして警察がすぐに到着し、被害者のケープの下に隠れていた「チャン!」と口紅で書かれたダイイング・メッセージを発見するのです。

 舞台上で象を消し去る奇術師ドン・ディアボロ、別名ニコラ・アレキサンダー・ドコルタ(通称ニック)が、彼の舞台パートナーである双子の姉妹パットとミッキーや新聞記者ウッディ・ヘインズらの協力を得て、不可能犯罪を解き明かします。ある時は警察の前から大マジックのように忽然と姿を消し、ある時はその正体がばれないように変装をして再び姿を現す。そして事件を解いたことが自分であることを公表せず、その真相をこっそりと警察に知らせるのです。自身の消失や交霊シーンの不可思議現象のトリックを惜しげもなく作中で明かすことが実に爽快です。一人のマジシャンが月光仮面となって悪役と闘う痛快物語です。

Death from the Unseen (別題:Death Out of Thin Air)
見えない死

 行方不明者の捜索をしていたヒーリー巡査部長が重要な情報をつかんだようで、チャーチ警視に会って報告したいと電話をかけてきます。別の事件で外出しようとしていたチャーチ警視が出掛けに話を聞こうとヒーリー巡査部長の部屋に近寄ると、部屋の中から一発の銃声が聞こえてきます。ドアには内側から鍵がかかっていたため、チャーチ警視が拳銃でノブを壊し部屋に入ると、ヒーリー巡査部長は頭を銃で撃たれ死にかけていました。部屋には誰もおらず、窓も内側から鍵がかかっていました。そしてチャーチ警視が電話をかけようとした瞬間、「また会おう、警視!」と背後で声がし、今入ってきたドアが閉まろうとしたのでした。チャーチ警視があわてて駆け寄り、ドアを開けて廊下を見渡すと、左右両側から警官が駆けつけており、誰にも会わなかったと証言したのです。さらに犯人は美術館にある有名な彫刻を盗む予告状も現場に残していたのです。

 今度のドン・ディアボロの相手は透明人間です。この透明人間は怪盗ルパンのように高価な物を盗むと予告状を送りつけ、まんまとディアボロと警察の鼻をあかします。ディアボロもこの犯人に四苦八苦し、ついには自身が金庫のなかに閉じ込められてしまいます。しかしその苦境を乗り越え、ディアボロは意外な犯人を突き止めるのです。刺激的な場面が多く、展開がスピーディーで、それでいてプロットが繊細に練られている傑作です。

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