Death Comes As The End

「死が最後にやってくる」

アガサ・クリスティ

1944

★★★

TO
PROFESSOR S. R. K. GLANVILLE

Collins Crime Club
1st edition in UK
Dodd Mead
1st edition in USA


あらすじ
 紀元前2000年のナイル川に面した村にインホテプという墓所守を長とした一族が住んでいた。インホテプの三人の息子と一人の娘及びその家族達が一緒に暮らしていた。ある日北方からインホテプが若い女性を伴って帰ってくる。その結果、家族内で確執が起き、いつしか連続殺人へと変わっていった。

感想
 紀元前という非現実的世界での物語ですが、読んでいて違和感無く楽しめます。レニセンブという女性を通じて語られることが、特殊な状況からくる難解さを減らしています。犯人当てを楽しむというよりは、クリスティが繰り広げるエジプト・ナイルの世界を堪能すべきでしょう。

おまけ

 その1)インホテプ
 そもそもインホテプという人物がエジプト神話に登場します。彼は祭司、著述家、医学者、天文学と建築学の基礎を固めるのに貢献した学者として有名だったそうです。後に書記の守護者とみなされ、その像もパピルスの巻物を持っています。

 その2)死が最後にやってくる (p49)
 言い伝えとなっている原文は以下の通りです。
男たちは女の輝くような四肢に迷い、愚者となる。されど、一瞬の後には色あせし紅玉髄となるものを・・・些細なること、小さきこと、はかなき夢にも似て、終りにただ死あるのみ Men are made fools by the gleaming limbs of woman, and lo, in a minute they are become discoloured cornelians... A trifle, a little, the likeness of a dream, and death comes as the end...

 その3)四十二の罪(p107)
 オシリス崇拝のなかで、死者はエジプトの四十二の州あるいは地方を代表する審判官の前で、その一人一人の名を呼び、一人一人を知っていて恐れる何ものも持たぬ事を証明し、自分が一人一人の審判官の特別の罪に関連していかなる非行にも悪質なことにも潔白であることを証明したと言います。
 その4)神々たち
 本編には数々の神の名が登場します。エジプト神話で語られる有名な神々たちを紹介します。
「死が最後にやってくる」
アガサ・クリスティー
加島祥造訳
ハヤカワ文庫
サクメト
(p77)
プタアの配偶者であって、メンフィス三神の女神であるサクメトは神聖秩序の擁護者の役割を担っていた。称号は「強力なるもの」であり、彼女は戦いと闘争の獰猛な女神ラアの敵に破壊をもたらすものであった。
ホルス
(p77)
ナイルの谷の初期の侵入者の隼神に当てられた名で、はじめは天空神であり、太陽と月が両眼だった。征服民族の標章であることから、隼は戦いの神と勝利の指導者を象徴化するに至った。
プタア
(p78)
エジプト創造神の中でも最も強力なものの一人であるプアタは、すべての創造の源とし、考えられる最も古い存在とされました。サクメトと共にメンフィスの三神です。
イシス
(p78)
オシリスの妻であり、ホルスの母である女神。セトの陰謀によりナイルに沈められた夫オシリスを懸命に探すことから、その献身さが普遍的に訴える力をもち、後に救済の女神になりました。
オシリス
(p78)
もとは牧神であったが、豊穣信仰が平和的にエジプト中に広がり、果てはエジプトの最高神とみなされるようになった。セトの陰謀後、イシス達によりよみがえるが、死者の世界で王国を維持した。

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