At Bertram's Hotel

「バートラム・ホテルにて」

アガサ・クリスティ

1965

★★★

For
Harry Smith
because I appreciate the scientific way
he reads my books

Collins Crime Club 1st edition in UK


あらすじ
 古きエドワード王朝時代の風格を持つロンドンのバートラム・ホテル。ミス・マープルは50数年ぶりに訪れたこのホテルが昔と何も変わっていないことに驚く。そこの宿泊人の一人にイギリスで知らない人はいないと言われる女性冒険家がいた。そして謎の少女。一見平和に見えるこのホテルで一人の牧師が失踪した。それと平行して起きる列車強奪事件。絡み合った糸はほつれて....。

感想
 この作品中のマープルはとても地味です。ほとんど表に出てきません。客席に座っているお客さんの一人といった感じです。また表に出てきたと思えば、普段はありえない間違いをしたりします。なんかいつもとキャラクターが違うと感じます。それはさておき、この本の主人公はやっぱりバートラム・ホテルです。終始描かれるその雰囲気がこの物語の全てです。こんなホテル泊まってみたいです。

おまけ

 その1)マープルの年齢 (p26, p67)
 この本でマープルの生誕年がわかります。冒頭、マープルが14歳の時に叔父、叔母に連れられてバートラム・ホテルに来た事が書かれています。そしてそれが1909年であったことが後に判ります。つまりジェーン・マープルは1895年生れだったわけです。この事件が起きたのが1965年とすると当時マープルは70歳だった訳です。

 その2)前回の事件 (p25)
 甥のレイモンド・ウェストが「この前の西インド諸島旅行など...」と「カリブ海の秘密」のことについて少し触れています。たぶんあの事件以来1年振りの出来事になるはずです。

 その3)マープルの親戚
 マープルの家系をひも解く鍵がたくさん載っています。以下登場順に列挙すると、
        姪 : ジョーン・ウェスト  (絵描き) (p24)
        甥 : レイモンド・ウェスト (作家) (p24)
レイモンドが血の繋がった実の甥で、ジョーンはその妻であり、マープルの義姪になります。
        叔父 : トーマス (イーリーの大聖堂評議員) (p25)
        叔母 : ヘレン (p96)
直接この二人が夫婦である記述はありませんが、前後からして夫婦と考えられます。
        大叔父 : トーマス (退役海軍大将) (p149)
叔父のトーマスと大叔父のトーマスが別々に二人いるとは考えにくいですが、職業記述が違いことから別人とみなしました。      
        遠いいとこ : メリデュー (p149)
        いとこ : エセル (p150)
この二人には何らかの関係があると思われるが真相は不明。
        いとこ : ファニー・ゴッドフリー (p153)
どもるクセあり。
        祖母 : (氏名不明) (p252)
        母  : クララ (p252)
仲良く親子3代でパリに行ったことが書かれています。
その4)校正ミス? (p179)
 校正ミス(?)発見。ハヤカワ文庫p179の中ほど
        「お茶でござましょうか?」
とあるが、これは
        「お茶でござましょうか?」
が正しいと思うのですが....。ところでこういうのも脱字って言うの?
「バートラム・ホテルにて」
アガサ・クリスティー
乾信一郎訳
ハヤカワ文庫

 その5)ミュージカル「フロロドーラ」 (p156)
 フレッド・デイビー主任警部が以下の様に歌う場面があります。

Tell me, gentle stranger,
are there any more at home like you?
A few, kind sir, and nicer girls you never knew.
"Floradora"
もしもし、やさしい見知らぬお方さま、
あなたのようなお方が、まだほかにいらっしゃいましょうか?
少しはおります、それはそれはやさしい娘たちが...
「フロラドラ」
これはロンドンがオリジナルで1900年にニューヨークのブロードウェイで輸入公演された「フロラドラ(別名フロロドーラ)」というミュージカルの一節です。クリスティはこの作品を"Floradora"と書いていますが、"Florodora"が正しいようです。当時ロンドンからニューヨークへ輸入された作品の中では最も成功したものらしく、ロンドン公演の455回を超す成績を収めたそうです。ショーの呼び物はフロロドーラ・セクステットと名づけられた6人の優美な女性たちが、それぞれのパートナーの男性を従えて、パラソルを回しながらなまめかしく歌う「きかせておくれ、かわいいお嬢さん」の場面だったらしい。物語はかなり手が込んでいて、「フロロドーラ」とはフィリピンにある島の名前であると同時に、そこで製造されている香水の名でもある。中年の香水製造業者サイラス・ギルフェイン(Cyrus Gilfain)は、ドロレス(Dolores)という娘と結婚したがっているが、彼女の父親は以前ギルフェインにだまされたことがあり、ドロレスは拒んでいる。ドロレスあh、ギルフェインの会社で働くマネージャーを愛しているが、ギルフェインは彼を自分の娘と結婚させたい。しかしギルフェインの娘には、また別の意中の人がいる。いろいろとあった後、最後は全員がウェールズに行き、誤解はとけて、カップルがめでたく結ばれる。ブロードウェイにおける再演の最後は1920年の上演で150回行われた。
参考文献
「ブロードウェイ・ミュージカル」
スタンリー・グリーン著
青井陽治訳
ヤマハ出版
Dodd, Mead & Company 1st edition in USA

  その6)マープルの失恋 (p28)
 なんとマープルの若かりし頃の失恋の思い出が出てきます。親に反対された後、1週間も泣き続けたとか。もし、その男の人とうまくいっていれば、今ごろマープルはどうなっていたんでしょうね?

  その7)著名推理小説作家のクリスティ評
 アメリカDodd, Mead & Company社発行の「バートラム・ホテルにて」の裏表紙にアメリカを代表する7人の推理小説作家のクリスティ評が載っています。

7 Top American Mystery Writers in a salute to Agatha Christie

ERLE STANLEY GARDNER: "Agatha Christie is tops in the mystery filed. All of her stories have ingenuity, and in these days, when so many writers simply rely upon style and so-called motivation, it's a pleasure getting a yarn which puts your brains to work."

JHON DICKSON CARR: "She has probably invented more ways of bamboozling the reader than any other living writer. Any young writer would find a whole course of instruction by studying her novels: watching the deft characterization while in full view she palms the ace."

GEORGE HARMON COXE: "In my opinion Agatha Christie stands alone among English writers of mystery and detective stories. No one I know of has done them so well for so long."

DOROTHY B. HUGHES: "My respect for Christie is boundless. She is certainly one of the all-time greats. I do not believe it possible to overestimate the debt that mystery fiction in general owes to Christie. She proves that quantity and quality can go hand in hand in peace."

HELLEN McCLOY: "I have always enjoyed the mystery novels of Agatha Christie. There is no other mystery writers who has maintained a greater output with a higher level of quality."

ELLERY QUEEN: "Agatha Christie has long been one of our favorite mystery writers. Surely she is one of the most imaginative and fertile plot creaters of all time."

HUGH PENTECOST: "Like good wine, Agatha Christie improves with age. When she writes formula, it's the best formula; when she writes off the track, she keeps you, skillfully, from seeing round the curves."

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