Endless Night

「終りなき夜に生れつく」

アガサ・クリスティ

1967

★★★

To
Nora Prichard
from whom I first heard
the legend of Gipsy's Acre

Collins Crime Club
1st edition in UK
Dodd Mead
1st edition in USA


夜ごと朝ごと
みじめに生れつく人あり
朝ごと夜ごと
幸せとよろこびに生れつく人あり
幸せとよろこびに生れつく人あり
終りなき夜に生れつく人あり
ウィリアム・ブレイク
「罪なき者の予言」
Every Night and every Morn
Some to Misery are born.
Every Morn and every Night
Some are born to Sweet Delight,
Some are born to Sweet Delight,
Some are born to Endless Night
William Blake
"Auguries of Innocence"

あらすじ
 「ジプシーが丘」と呼ばれる地でマイクはエリーと出会った。そこは呪われの地と恐れられていた場所だった。二人はお互いに気が合い結婚する。しかしエリーはアメリカの大富豪の娘で莫大な資産を相続していた大金持ちだった。周囲の反対を押し切り「ジプシーが丘」で建築家サントニックスの建てた家に住み生活を始めた二人の身に不思議な事が起き始める。そして馬で散歩に行ったエリーが死体となって発見される。

感想
 クリスティお気に入りの一作です。犯人は「!」ですが、この作品の良い所は恋愛小説かと思わせるような描写だと思います。風景、感情、動作など他の作品には見られない位丁寧に描かれていて、本当に推理小説?と思わせます。しかし「あれよ、あれよ」と話の終りに近づき、最後にドスンと落とす技は見事です。

おまけ

 その1)ウィリアム・ブレイク 
 題名に使われた詩を書いたウィリアム・ブレイクは1757年から1827年まで生きたイギリスの詩人・画家です。ロンドンの靴職人の家に生れ。子供の頃から異常な幻視力を示したそうです。10歳で版画師の徒弟となり、12歳で詩を書き始めます。無名と貧困に埋もれながらも晩年まで創作活動を続けたそうです。

 その2)「罪なき者の予言」
 この詩の題「罪なき者の予言」は「天真のト徴」とも訳されています。この作品はブレイクの抒情予言とも呼ばれたこともある頃の詩で、1800年頃にフェルパム在住年間の作と推定されているそうです。

 その3)オセロ(p227)
 シェイクスピア好きのクリスティがオセロを引用しています。「娘は父親までもだましおった。されば、なんじもまた。」というセリフは、第一幕第三場でデズデモーナの父ブラバンショーがオセローに向かって言います。デズデモーナはオセローの妻ですね。この時オセローは、国敵トルコ軍からサイプラス島を守るためにヴェニス公から島への派遣を依頼されていたのです。

 その4)原型は「管理人の老婆」
 この物語と全く同じ展開をする短編があります。"The Case of the Caretaker (1950)"です。邦題は「管理人の老婆」又は「ミス・マープル風邪をなおす」と言うマープル物です。ぜひ読み比べて下さい。
 その5)クリスティの中の日本(p230)
 庭作りのプランを練るためにイタリア庭園や日本庭園を見に行くとあります。やはり日本庭園は世界的にも特徴ある庭形式なんですね。
「終りなき夜に生れつく」
アガサ・クリスティー
乾信一郎訳
ハヤカワ文庫

  その6)建築様式
  家がテーマであることから、この作品中には様々な建築様式が紹介されたり、「〜朝」という表現が多く出てきます。

ジョージ王朝風(p185) 英国王ジョージ1世の即位(1714)からジョージ4世の没年(1830)に至る同名の4国王の時代に作られた建築、家具、銀器などに見られるすべての様式を包括する呼称で、バロックに反動し、古代ローマ建築の構造を重視しています。
アン女王時代(p189) 1605年から1714年まで生きたアン女王時代の様式で、コーヒーハウス(喫茶店)に象徴されるような近世市民の生活文化が花開いた時代のもの
ビクトリア王朝時代(p236) 1837年から1901年まで。工業化と都市化が進み、それを背景に中流階級が勢力を増大させ、経済と政治の重要な担い手となった時。
エドワード朝時代風な黒(p242) エドワード3世の長子で1330年から1376年まで生きたエドワードは黒太子と呼ばれ、着用していた甲冑の色に由来している。

  その7)蝿よ(p193)
  エリーが歌うこの曲もウィリアム・ブレイクの詩です。"Songs of Experience(経験の歌)"と呼ばれる詩集に入れられた「蝿よ」というものです。

小さなハエ
夏の遊びをしていたおまえ
心ないわたしの手が
おまえを払いのけた

わたしだって
ハエのおまえみたいじゃない?
それともおまえが
わたしみたいな人?

だからわたしはおどって
飲んで うたう
目に見えない手が わたしの
羽を払いのけるまで

思いが命と
力と息ならば
その思いがなければ
死があるばかり

なれば わたしは
しあわせなハエ
生きていようと
死んでしまおうと
Little Fly
Thy Summer's play
My thoughtless hand
Has brushed away.

Am not I
A fly like thee?
Or art not thou
A man like me?

For I dance
And drink, and sing
Till some blind hand
Shall brush my wing

If thought is life
And strength and breath
And the want
Of thought is death;

Then am I
A happy fly
If I live
Or if I die.



Endless
Night

AGATHA CHRISTIE

"Endless Night remains one of the best
things Mrs. Christie has ever done."
Edmund Crispin, Sunday Times

"This is Christie at toppest peak."
Evening Standard

"The crashing, not to say horrific surprise
at the end is perhaps the most devastating
that this surpriseful author has ever brought
off."
Francis Iles, Guardian

"Wickedly ingenious murder mystery that
remains impenetrable until the shock
revelation."
The Scotsman

"It is thrillingly and artistically perfect."
Liverpool Daily Press
Rear Dust Jacket of "By the Pricking of My Thumbs"
Collins Crime Club 1st edition in UK

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