The Labours of Hercules

「ヘラクレスの冒険」

アガサ・クリスティ

1947

★★★★

Collins Crime Club
1st edition in UK
Dodd Mead
1st edition in USA


あらすじ
 引退を考え始めていたポアロはバートン博士との会話から、これから引退するまでの期間に12の事件を引き受けることにした。それもただの12件では無く、ギリシア神話に出てくる「ヘラクレスの12の難業」に照らし合わせ選ぶのである。かくしてポアロは奇想天外な数々の事件を解き明かすこととなった。

感想
 クリスティが「ヘラクレスの12の難業」をいかに推理小説化したかが見物です。決して内容を似たような物とはせず、12の事件にそれぞれ特徴を持たせ、魅力あふれる「難業への照らし合わせ」に感嘆せざるを得ません。12作全部で一つの長編になっているとも言える傑作短編集です。

おまけ

 その1)アシル・ポアロ(Achille Poirot)(p10)
 エルキュール・ポアロに兄がいたと言う事実が明らかになります。名はアシル。ギリシア神話に出てくるアキレスのことです。アキレス腱の名の由来の人物です。

 その2)シエイクスピア(p244)
 ポアロがシエイクスピアの一節を引用します。これは『マクベス』において、夢遊病のマクベス夫人を治療するために呼ばれた医者に対してマクベスがはいたセリフです。
そなたは病める心を救うことができるのか
『マクベス』第5幕第3場
Canst thou not minister to a mind diseased
"MACBETH" Act5, scene 3

 その3)ダチューラ(p256)
 Datura、ちょうせん朝顔、ナス科植物で熱帯アジア原産の一年草。葉を曼荼羅葉(まんだらよう)と呼んでぜんそくの薬とするが、猛毒があり、中毒すると苦しんであばれるそうです。
 その4)ホームズ、フォーチュン氏、サー・ヘンリー・メリヴェイル(p317)
 それぞれコナン・ドイル、H・C・ベイリー、ジョン・ディクスン・カーが生み出した名探偵です。サー・ヘンリー・メルヴェイルは通称HM卿と呼ばれています。
「ヘラクレスの冒険」
アガサ・クリスティー
高橋豊訳
ハヤカワ文庫

 その5)ロデリゴ・ボルジア(p348)
 詳しくは「カリブ海の秘密」をご覧ください。ボルジア家に関しては「蒼ざめた馬」「ポケットにライ麦を」などにも登場します。クリスティを始めイギリス人にとって毒といえばボルジア家のようです。

 その6)収録短編

作品名 原題
ことの起こり Foreword
ネメア谷のライオン The Nemean Lion
レルネーのヒドラ The Lernean Hydra
アルカディアの鹿 The Arcadian Deer
エルマントスのイノシシ The Erymanthian Boar
アウゲイアス王の大牛舎 The Augean Stables
ステュムパロスの鳥 The Stymphalean Birds
クレタ島の雄牛 The Cretan Bull
ディオメーデスの馬 The Horses od Diomedes
ヒッポリュトスの帯 The Girdle of Hyppolita
ゲリュオンの牛たち The Flock of Geryon
ヘスペリスたちのりんご The Apples of the Hesperides
ケルベロスの捕獲 The Capture of Cerberus

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