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Nemesis |
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| Collins Crime 1st edition in UK |
Dodd Mead 1st edition in USA |
あらすじ
ある日マープルは新聞の死亡欄で、かつて「カリブ海の秘密」において事件に共に関わった大富豪の名を見つける。そしてその富豪の弁護士から遺言状を手渡される。そこには犯罪の捜査の依頼が書かれていた。受けてたつことにしたマープルは何もわからぬまま用意された「庭園めぐり」の旅に出かける。その同じ旅行客の中に富豪の名を知る人物が現れる。そして過去の事件が紐解かれる。
感想
いつも偶然に事件に巻き込まれるマープルが、めずらしく自ら能動的に事件に関わります。いわゆるクリスティの晩年の新しいミステリの形態を取るこの作品は、途中まで事件が起きないため、マープルと同じで何がなんだかわかりません。しかし最後に一気にそれら全てを明らかにしてくれます。ただちょっと登場人物が多いのが気になります。なかには印象に残らない人もたくさんいます。しかしこの作品のテーマである「愛」に感動します。クリスティが語りたかったことがほんの少し判るような気がします。
おまけ
| その1)三部作 この作品は「カリブ海の秘密」と「Woman's Realm」という未完の作品と共に三部作を成す予定でした。実際「Woman's Realm」は発表されなかったため、クリスティの書いた最後のマープル物になってしまいした。さてこの後マープルに何が起きる予定だったのでしょう? その2)ギリシア神話(1) 題名の「ネメシス」はギリシア神話で「人間の思い上がった無礼な行為に対する神の憤りと罰を擬人化した女神」となっています。辞書では単に「復讐の女神」となっているものもありますが、どうやら復讐と訳すのは誤りで「不当なことに対する憤り:義憤」とするのが正しいようです。ゼウスが彼女と交わらんとして追ったが、彼女はさまざまに姿を変えてのがれ、ついに「がちょう」になったところ、神は白鳥となって彼女と交わり、女神は卵を生んだ。これを羊飼が見つけてレーダーに与えた。これからヘレネーとデイオスクーロイが生まれたとあります。
参考文献
「ギリシア・ローマ神話辞典」 高津春繁著 岩波書店 その3)ギリシア神話(2) (p112, p303, p320) 本文中にたびたび出てくるクライティムネストラ(Klytaimestra)とアガメムノン(Agamemnon)とはギリシア神話の夫婦です。アガメムノンはミューケナイの王であり、クライティムネストラは、初め彼の叔父の子に嫁いでいたけれども、アガメムノンが二人を殺しクライティムネストラの意に反して彼女を妻とします。アガメムノンがトロイアの戦いの総大将として遠征している間に、アイギストス(Aigisthos)はクライティムネストラと通じ、凱旋した王を浴室内で刺殺します。この辺のくだりがアイスキュロスの悲劇「アガメムノン」として知られています。
参考文献
「ギリシア神話」 呉茂一著 新潮社 |
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| その4)マープル家のお手伝い (p18) 「鏡は横にひび割れて」において、通いから夫婦での住み込みに変えて欲しいとマープルに願い出たお手伝いのチェリーが、この作品においてそれを実現させています。おまけに前任のミス・ナイトを追い出して! |
「復讐の女神」 アガサ・クリスティー 乾信一郎訳 ハヤカワ文庫 |
その5)アモス書 (p39, p334)
依頼者の富豪ラフィールが遺言状の最後に次の一節を用います。
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And righteousness like an everlasting stream
Amos
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公道を水のように 正義をつきない川のように流れさせよ
アモス書
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これは旧約聖書アモス書の一節です。アモスとは紀元前8世紀のイスラエルの予言者のひとりです。アモスにとって神は絶対的な力強い人格であって、その明確な使言を伝えることが使命と思っていました。主に神の義と審判が中心的内容です。上の文章はそのアモス書の中の5章24節に出てくる文で「祭りにまさる正義」について書かれた一節です。ここでいう公道はもちろん通行の道ではなく、正しい人の道、正義の道を指します。
参考文献
「聖書辞典」
新教出版社編
その6)インチタクシー (p51)
「鏡は横にひび割れて」において登場するインチタクシーのさらに詳しいうつりかわりが書かれています。創始者インチ、その息子、ピップ自動車、ジェームス・タクシー、アーサー・ハイヤーの主人ジョージ。「鏡は横にひび割れて」と本作から想像するにピップ自動車の主人はバードウェル、ジェームス・タクシーの主人はロバーツ(名が違うが.....。)、そして今ジョージのアーサー・ハイヤーになります。
その7)以前の事件 (p73, p89)
「カリブ海の秘密」はもちろんですが、「バートラム・ホテルにて」と「書斎の死体」の事件がマープルによって回顧されます。
その8)T.S.エリオット (p92)
さてさてやたら引用の多い本書、次はミュージカル「キャッツ」の原作者として有名な詩人T.S.エリオットです。
| The moment of the rose and the moment of the yew tree are of equal duration
T.S. Eliot
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つかの間のバラの時も、 つかの間のイチイの木の時も、 同じ長さである
T.S.エリオット
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この詩はエリオットの極点を示すといわれる「四つの四重奏」の一節です。「四つの四重奏」は「バーント・ノートン」、「イースト・コウカー」、「ザ・ドライ・サルヴェイジィズ」、「リトル・ギディング」の四つの地名を題とした構造になっており、本文はその結びである「リトル・ギディング」の第5部からの引用です。この詩でバラは生を表し、イチイの木は死を表しており、「時なき時の一瞬一瞬」が「時」のなかに顕現されてゆく軌跡としての歴史が考察されています。
その9)セント・メアリ・ミード村 (p97, p116)
マッチ・ベナムからそれほど遠くないところで、ルーマスの海岸からわずか12マイルとマープルは場所を説明します。また、ルーマスとマーケット・ベイシングのまん中あたりのところです。ロンドンからは二十五マイルほど、とも言います
その10)マープルの叔父叔母 (p171)
親戚、特に叔父叔母の多いジェーン・マープルですが本書でジャック叔父夫婦が登場します。うそをつく人のニオイがわかる叔母だそうです。
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NEMESIS Agatha Christie "A Christie of great charm, distinguished by its true, sympathetic but unsentimental observation of the unhappy middle-aged and happy old." Francis Goff, Sunday Telegraph "On top of her form. There is the usual firmly and economically drawn gallery of minor characters, and there are the usual cogent home truth." Financial Times "With this first-rate story Dame Agatha triumphantly returns to the traditional detective novel." Alexander Muir, Daily Mirror "The Nonesuch of crime on top form." Alec Spokesman, Northern Echo "A whodunit which for mystery and neat unravelling is up to the standard of her very best." Andrew Hope, Evening Standard "Well upholds Dame Agatha's reputation for the ingeniously unexpected." Edmund Crispin, Sunday Times |
| Rear Dust Jacket of "Elephants Can Remember" Collins Crime Club 1st edition in UK |
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