Crippen & Landru
Cloth Edition
1st edition in USA
The Spotted Cat
and Other Mysteries
from Inspector Cockrill's Casebook

クリスチアナ・ブランド
Christianna Brand


2002

★★★

収録短編

Inspector Cockrill

作品から引用しながら、クリスチアナ・ブランド自身がコックリル警部の容姿や性格について語ります。

After the Event
事件のあとに
(『招かれざる客たちのビュッフェ』)

『オセロー』の舞台終了後、女優のグレンダ・クロイが楽屋で絞殺されます。被害者と犯人らしき人物が直前に台詞をしゃべっていたとの証言から、夫であり俳優のジェイムズ・ドラゴンに容疑がかかりますが、劇団員が不審な行動を取っていたことで意外な面から真相が明るみに出ます。舞台俳優の特性をうまく利用した謎解きが秀逸です。

Blood Brothers
血兄弟
(『招かれざる客たちのビュッフェ』)

双子の弟は兄の彼女だった女性とドライブしていて、木いちごのはいった缶をかかえた男の子を車で轢いてしまいます。弟は瓜二つの兄に相談すると、兄はアリバイを申し立ててくれます。さらに車に同乗していた女性が警察に通報するのではないかと恐れた兄弟は、今度は兄がその女性を轢き殺し、弟がそのアリバイを立てる作戦をとります。瓜二つの双子だからできる究極のトリックの結末はコックリルも気付かない意外なものでした。

The Hornet's Nest
婚姻飛翔
(『招かれざる客たちのビュッフェ』)

サイラス・キャクストンは亡くなった彼の先妻の看護婦だったエリザベスと結婚することになったのですが、その披露宴の席上で青酸により毒殺されてしまいます。披露宴に出席していたのは、サイラスの息子シオと継子ビル、そしてロス医師とコックリル警部の四人だけでした。短編ながら様々な動機と機会を用意し、人々の些細な仕草や話のなかにそれらを隠すテクニックは見事です。

Poison in the Cup
カップの中の毒
(『招かれざる客たちのビュッフェ』)

ケリーという看護婦がステラの自宅を訪れ、ステラの夫リチャード医師の子供を身ごもったと告げます。さらにケリーは致死量のモルヒネを飲んできたと言いますが、リチャードに嘘と見抜かれます。怒り心頭のステラはコーヒーにモルヒネを混ぜてケリーに飲ませ、彼女が自殺したかのように見せかけます。倒叙物としてステラの心の動きはよく表現されているのですが、コックリルに犯行を見破られるステラの言動は読者にも容易に気付かれます。

The Telephone Call
最後の短編
(『HMM』1973年7月号)

パムと結婚したいが金が無かったぼくは、エレン叔母さんを殺して、いとこのピーターにその罪をかぶせ、自分は遺産をもらうという計画を立てます。ピーターの靴を履いたり、ピーターの指紋の着いた灰皿を現場に持参したりして完全犯罪を目論んだぼくでしたが、ある事実からコックリル警部はあっさりとその真相を見抜いてしまいます。自白調書と短編小説を掛け合わせた傑作ミニ・ミステリです。

The Kissing Cousin

入院中の兄ビルを見舞ったフランカは伯母アデラからいいつかった台所の壁の掃除をするために帰宅します。そこでフランカは伯母アデラが頭を殴られ死んでいるのを発見します。伯母の残した莫大な遺産を継ぐのはビル、フランカの兄妹か、それとも遠い親戚(Kissing Cousin)か。珍しくサスペンス・タッチの作品です。

The Rocking-Chair
ロッキング・チェア
(『HMM』1988年12月号)

今から十五年前、コーンウォールの沖合いに位置するセント・マーサ島の湖畔の家で、二人の老姉妹と一人の若い女性が射殺され、頭を寄せ合い、クローバーの葉のように広がって床に横たわっているという事件が発生します。老姉妹は島民誰からもから愛されており、身元不明の若い女性が事件の鍵を握ると考えられました。三人の内一体誰が何の目的で二人を射殺し、自分も自殺を図ったのか?コックリルとホークスメア公爵夫人がこの謎に挑みます。恐らく完成された作品としてはブランド最後の作品。

The Man on the Roof
屋根の上の男
(『HMM』1983年7月号)

自殺をすると派出所に予告の電話をしていたホークスメア公爵が、自宅敷地内にある番小屋で頭を銃弾で撃ち抜かれて死んでいるのを地元警察官によって発見されます。雪の降り積もった上には、発見者である警察官の自転車のタイヤの跡しか残っておらず、番小屋は鍵がかかっていたことから公爵は自殺したものと推測されました。しかし、肝心の銃がそこには無かったのです。ブランドが英米に先駆け日本のミステリ・マガジンに書き下ろしたホークスメア公爵夫人のデビュー作です。

Alleybi

ひとりの女性が殺害されるのですが、容疑者と目される男は殺害時刻にアーセナルのサッカーの試合に夢中になっていたと男の妻が証言します。チャールズワース警部が提示したアリバイの謎をコックリル警部が見事に解く、たった2ページのミニ・ミステリです。

The Spotted Cat

ティナは愛人レオナルド医師とともに夫グラハムの殺害を計画します。ティナは、シェリーの入ったぶち模様の猫の絵が描かれたグラハムお気に入りのグラスに睡眠薬を混ぜますが、その時に限って娘婿のフリッツがそのグラスを手にしてしまい、その後死亡するのです。これまで未発表だった三幕物のシナリオで、最後にどんでん返しが用意された出来の良いものです。

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