The Long Divorce

「永久の別れのために」

エドマンド・クリスピン


1951

★★
原書房
大山誠一郎訳

 コットン・アバス村ではここ二、三週間の間に「中傷の手紙」が多数の住民に送りつけられ、地元警察が捜査に乗り出していました。そんな中、「中傷の手紙」を受け取ったと思われる資産家の婦人が自宅で首を吊って自殺します。現場には手紙の燃えさしはあったのですが、なぜか封筒が見つかりません。さらに数日後、村に住むスイス人教師が刺殺されます。状況はある女性医師に不利となるものばかりでした。

 劇場という華やかな場所を舞台にした『白鳥の歌』とはうってかわり、これぞイギリスのヴィレッジ・ミステリと言わんばかりののどかな郊外を舞台にしているのが読んでいる者の心を和ませてくれます。「中傷の手紙」をテーマにしているだけあって、人と人との関係を丁寧に描いており、特に男女の恋愛は「禁じられた恋」「内気な恋」「一途な恋」と様々な形態を見せてくれます。探偵役はご存知フェン教授なのですが、彼の捜査過程がほとんど描かれておらず、唐突に解決編が始まるのが不自然でなりません。ある程度は読者をじらすような場面があっても良かったのではないでしょうか。そうは言っても関係者を一同に会した犯人指摘の場面はワクワクさせられます。

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