Murder in Gray and White

「氷の女王が死んだ」

コリン・ホルト・ソーヤー


1989

★★★
創元推理文庫
中村有希訳

 老人ホーム<海の上のカムデン>にまた新しい入居者がやってきました。引越し業者のみならず、個人雇いの室内装飾家まで連れてきた新参者エイミー・キンゼスはその態度からして<氷の女王>と呼ばれるにふさわしい人物でした。挨拶に来る者を冷たくあしらい、看護婦を拒否し、人々の好意を足蹴にし続けたのです。その嫌われ者エイミーがある早朝、体操に使われる棍棒で撲殺されます。さっそくサンディエゴ郡警察のマーティネス警部補がやってきて捜査を開始しますが、<海の上のカムデン>の入居者アンジェラとキャレドニアも興味本位で探偵ごっこを始めたのでした。

 大体、ひとつの老人ホームで殺人事件を何度も起こすなんて無茶な設定です。でもそうしないと老嬢たちに会えないし、彼女達が活躍できないんです。前作『老人たちの生活と推理』と同様、チビのアンジェラとノッポのキャレドニアのコンビが警察の注意も無視して(誤解して)、<海の上のカムデン>のなかを駆けずり回ります。ふたりの愛くるしいキャラクターは相変わらずで、個性豊かなホームの人たちとの楽しいおしゃべりも繰り広げてくれます。このおしゃべりを目当てに読んでもいいくらいです。難しいトリックやどんでん返しなどはありませんが、伏線はきちんと引かれており、犯人逮捕に向かってうまい盛り上がりを見せます。

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