Four Faultless Felons

「四人の申し分なき重罪人」


G・K・チェスタトン


1930

★★★
国書刊行会
西崎憲訳

 新聞記者エイサ・リー・ピニオン氏がマリラック伯爵から紹介された四人は『誤解された男のクラブ』の会員で、それぞれ人殺しや窃盗などの罪を過去に犯したと言い、順に彼らの経験を話し始めたのでした。エジプトに隣接した国ボリビアに総督として着任したトールボーイズ卿が銃で撃たれる「穏和な殺人者」、画家のウインドラッシュ氏が自宅庭に生えている樹を自分以外の誰にも見せずひた隠しにする「頼もしい藪医者」、実業家ジェイコブ・ナドウェイ氏の長男が盗みを行う度に落し物をする「不注意な泥棒」、そしてパヴォニア国で数人の学者達によっておこされようとしている革命を描いた「忠義な反逆者」。そのどれもに意外な真相が隠されていたのです。

 神秘的な光景を描いていたかと思えば、狂人的な人の心理を映し出す、一体この言葉の洪水はどこから来るのか、「ブラウン神父」では味わえない逆説の文学者チェスタトンの真髄を見たような気がします。バラバラに発表された四つの中篇を、ピニオン氏を登場させることによって一冊の単行本に仕上げた編集能力も見事です。普段読みなれたミステリとはかなり雰囲気が違いますが、チェスタトンという特異な作家を語る上では外せない一冊でしょう。

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