世界探偵小説全集33

Beyond a Reasonable Doubt

「真実の問題」


C・W・グラフトン


1950

★★★★
国書刊行会
高田朔訳


あらすじ
 弁護士のジェス・ロンドンは義兄ミッチェル・サザンが実姉マーセラを騙したことを知ると、カッとなって手元にあった丸いライターで殴り殺してしまいます。事件発覚直後、警察が姉マーセラに容疑をかけていることを知ったジェスはすぐに自白を行いますが、当初警察はそれを信じようとしませんでした。しかし証拠が出揃った段階で警察はジェスを逮捕、裁判が始まります。そこでジェスは自ら弁護士となり、一転して自分の無罪を主張し始めます。果たしてジェスは無罪を勝ち取ることができるのか?

感想
 いわゆる法廷ミステリですが、法廷用語が飛び交うことはほとんど無く、裁判臭さが無いのでその手は苦手という人には向いているかもしれません。400ページを93もの小さな章に分けているのが絶妙なテンポを生み出しており、とにかく読みやすいです。小さな事実が錯綜するようなことも無く、ひとつひとつが丁寧に吟味され、読者にも判りやすく説明されます。検察側が証拠をつきつける度に読者は冒頭に起こった事実を再認識するのですが、それをジェスが見事な虚偽の発言でひっくり返す様が小気味よく、その名調子に唸りだします。最後の最後に起きる事実に作者の卓越した演出力を感じます。

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