世界探偵小説全集15

Clues of the Caribbees

「カリブ諸島の手がかり」


T・S・ストリブリング


1929

★★★
国書刊行会
倉阪鬼一郎訳


感想
 「クイーンの定員」(エラリー・クイーンが選んだ世界の名作短編集)第80番にも選ばれているこの短編集。世界探偵小説全集の中でもかなり前評判が高く、話題にもなっていました。収録作品は以下の5編。

  ・「亡命者たち」
  ・「カパイシアンの長官」
  ・「アントゥンの指紋」
  ・「クリケット」
  ・「ベナレスへの道」

 なかでも「ベナレスへの道」がその終り方から珠玉の短編とされてきており、短編集の中でも光っています。どれもカリブ海諸島の島々で起きる難事件をアメリカの心理学者ポジオリ教授が紐解いていきます。探偵というより、事件に出くわしてたまたま解決した、と言った方がいいかもしれません。宗教、文化、人種などのテーマを見事に織り込んで作り上げられていて、中米の世界をまるで自分がクルージングしながら回っているかのように楽しめます。恥ずかしい話ですが、「ベナレスへの道」のエンディングは最初直ぐに意味が判らず、2、3度読み返して初めて理解できました。読解力が足りないのでしょう。個人的には「亡命者たち」が印象に残っています。書評では「カパイシアンの長官」が特異的でおもしろいとありますが、私はあまり馴染めませんでした。

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