世界探偵小説全集34

Constable Guard Thyself !

「警察官よ汝を守れ」


ヘンリー・ウエイド


1934

★★★
国書刊行会
高田朔訳


あらすじ
 20年前、スコール大尉がブロドシャー州警察本部長に任命された当時、州は密猟の横行に悩まされており、実際は森番ラヴは事故で死んだにもかかわらず、その場に居合わせた密猟者アルバート・ハインドを殺人の重罪で終身刑に処したのは、他の密猟者に対する見せしめでした。そのアルバート・ハインドが刑期を終え出所し、その恨みからスコール大尉を脅し始めます。警察全体が警戒を強めた矢先、警察本部に銃声が響き渡り、執務室にいたスコール大尉が射殺されます。署内にいた警察官達が部屋に駆けつけると犯人はすでに消え去った後でした。

感想
 警察署内で事件が発生し、警察署内で捜査が行われ、警察官が容疑にかけられるという前代未聞の設定がとにかく惹きつけられます。犯人を逮捕しようと真剣に捜査する警察官を褒め称えるとともにそれを皮肉るという二面性を持っています。プール警部の捜査過程を読者に一切隠していないため、彼が知り得たことは読者も同時に知り得ます。それ自体はとてもフェアで嬉しいことなのですが、それゆえに驚きが失われてしまっています。ミステリである以上は何かしら読者を驚かす仕掛けをして欲しかったです。

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