世界探偵小説全集39

Holy Disorders

「大聖堂は大騒ぎ」


エドマンド・クリスピン


1945

★★★
国書刊行会
滝口達也訳


あらすじ
 イギリス南部の街トールンブリッジにある大聖堂のオルガン奏者デニス・ブルックスが何者かに襲われ意識不明の重体となります。偶然にも現場に居合わせたオックスフォード大学教授ジャーヴァス・フェンは友人である作曲家のジェフリイ・ヴィントナーに至急現場に来るよう電報を打ってきます。ところがジェフリイがトールンブリッジに向かおうとすると、それを阻止するかのようにジェフリイの身に次々と災難が降りかかってくるのです。そしてジェフリイがトールンブリッジに到着したその夜、聖歌隊長のバトラー牧師が鍵のかかった大聖堂のなかで巨大な墓碑の下敷きになり死んでいるのが発見されるのです。

感想
 学校や劇場など現場設定を大事にする著者エドマンド・クリスピンが本作で選んだのはイギリスらしい大聖堂で、荘厳ななかにも怪しい雰囲気を醸し出しています。中盤から突如として登場する黒魔術によってその怪しさが一層増し、作中で紹介されるサーストン主教の日記では魔女狩りがグロテスクに描かれています。一方でドタバタ劇も随所に織り込まれ、読者を大いに楽しませてくれます。真犯人が判明した後のフェン教授の推理披露シーンでは真相に近づくためのヒントが隠されていたページを参照しており、ミステリとしての本格性に自信を表しています。

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