世界探偵小説全集45

Death's Mannikins

「魔法人形」


マックス・アフォード


1937

★★★★
国書刊行会
霜島義明訳
Appleton Century
1st edition in USA (copy)


あらすじ
 悪魔学研究家のコーネリアス・ロチェスター教授宅に滞在していた友人が、ロチェスター家の人々を模して小さな木彫りの人形を作ったことがありました。その人形セットが行方不明となってしばらく経ったある日、ロチェスター教授の妹ベアトリスの元へ彼女の人形が送られてきます。そして数日後、ベアトリスが階段で滑って転落死するのです。更に今度は教授の長男ローガンの元へ胸に釘の刺さった人形が届いたため、犯罪の匂いを感じた教授の秘書ロロ・モーガンは旧友の数学者ジェフリー・ブラックバーンをロチェスター屋敷に連れて来て、その真相を探らせようとします。しかし、ジェフリーが到着してすぐ、ローガンが邸内の礼拝堂で胸をナイフで刺されて死んでいるのが発見されるのです。

感想
 オーストラリア作家ながら、イギリスの古き良き黄金時代を感じさせてくれる本格物の傑作です。雨が降っていたのに泥の付いていない被害者のスリッパや、一つしかない鍵を執事が所持していたのに開けられた礼拝堂など不可能状況が設定され、それを装飾するように木彫りの人形や種々のオカルティズムが効果的に配備されています。伏線の貼り方とその回収の仕方は実に見事で、犯行が偶然に頼りすぎている欠点を補っています。ジェフリー・ブラックバーンが目的も告げず地方へ調査に行ったり、悩み抜いた末に小さなきっかけで全容を知るなど、黄金時代の探偵らしく振舞うことに好感を抱きます。

Frank Jonson
1st edition in Australia
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