世界探偵小説全集32 Suicide Expected 「自殺じゃない!」 シリル・ヘアー 1939 ★★★ | |
国書刊行会 富塚由美訳 |
あらすじ
休暇で<ペンデルベリー・オールド・ホール・ホテル>に滞在していたマレット警部は、そのホテルを馴染みにしているレナード・ディキンスンという初老の人物と知り合いになります。そのレナードがホテルの自室で睡眠薬を大量に服し死亡しているのが翌朝発見されます。検死審問の結果、レナードの死は自殺と評決され、レナードの生命保険から遺族に対して保険金は支払われないことになりました。父親が自殺したとは信じられない子供たちは自力で事件の真相を探ろうとします。
感想
本書の途中でレナードが滞在していたホテルの見取り図と事件当夜の部屋割りが描かれていますが、それらを見ると俄然色めきたつような読者を心底唸らしてくれるどんでん返しがラストに待っています。散りばめられた伏線の数々や完璧なまでのミス・ディレクションは称賛に値します。惜しむらくは、途中子供たちがホテル滞在者を訪ね歩くシーンなどがあまりにも退屈なところです。この辺をもっと充実させれば、歴史に残る名作になったかもしれません。
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