The Footsteps at the Lock 「閘門の足跡」 ロナルド・A・ノックス 1928 ★★ | |
新樹社 門野集訳 |
デレック・バーテルは祖父から五万ポンドの遺産を相続しますが、その全額はデレックが二十五歳になるまで信託財産とされていました。デレックは将来手に入る遺産を当てにして借金を重ねた上、酒に溺れすぎて健康を害し、二十五歳の誕生日を迎えられるか怪しくなっていました。保険会社の指示で医師の診断を受けたデレックは、その医師からボートでの川くだりを勧められます。そしてデレックは川くだりの連れとして犬猿の仲のいとこ、ナイジェル・バーテルを選びます。ところが、その川くだりの途中でデレックは行方不明となり、捜索のために警察が現われると今度はナイジェルが失踪してしまいます。
川の近辺に残された数々の手がかり、完璧なまでのアリバイ、送られた謎の暗号など、本格ミステリの要素が満載なのですが、文章が読みにくいために、おもしろさが伝わってきません。川くだりを行ったテムズ川の情景描写も今ひとつで、イメージが沸きません。とても良いプロットだと思うだけに、表現で失敗しているのは残念です。保険会社インディスクライバブル社の私立探偵マイルズ・ブリードンと妻のアンジェラはいい味を出しています。
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