La Quatrieme Porte

「第四の扉」

ポール・アルテ


1987

★★★★
ハヤカワ・ポケットミステリ
平岡敦訳

 今から数年前、オックスフォードにほど近い村にあるダーンリー家の夫人エレノアが密室の屋根裏部屋で血まみれになって死ぬという事件が起きました。それ以降、その屋根裏部屋では幽霊が出るという噂がたち、ダーンリーが屋敷の一部を間貸ししようとも皆すぐに退去してしまっていました。そのダーンリー家の向かいに住むホワイト夫人が交通事故で亡くなります。家族が悲しみに沈んでいた時、ダーンリー家の新しい間借り人であるラティマー夫人が不思議な霊力で亡くなったダーンリー夫人やホワイト夫人と交霊をし、皆を驚かせます。その1ヵ月後、ホワイト家の主人アーサーが夜道で何者かに襲われます。また同時にアーサーの息子ヘンリーが失踪してしまうのです。ヘンリーが現れないまま3年が経ち、ダーンリー家の屋根裏部屋では再び交霊会が開かれようとしていました。霊に会うため、ラティマー氏が封印された屋根裏部屋にひとりで入ったのですが、数十分たってアーサーが声をかけても中から返事が返ってきません。アーサーが慌てて封印を解き中に入ると、そこにラティマー氏の姿は無く、失踪していたはずのヘンリーが背中をナイフで刺されて死んでいたのです。

 フランスのディクスン・カーと呼ばれるポール・アルテの初翻訳長編です。自身はフランス人であるにもかかわらず、登場人物や事件現場など物語の設定を全てイギリスにしてあるところに、著者の本格ミステリに対する愛情を感じます。発表年が判らなければ、イギリス黄金時代の作品と勘違いしそうです。冒頭から謎、謎、謎のオン・パレードで、不可能・不可思議現象を惜しげも無く披露します。探偵役を犯罪学者のアラン・ツイスト博士としながら、本人がいつまで経っても現れないのでどうなっているんだと思っていると、実に意外な形で結末間近に登場してきます。そこで明かされる密室トリックは凝ったものですが、国内ミステリに似たものがあるので新鮮さは感じられませんでした。しかし驚くことはそれで終わらず、最後の1行に大オチを用意しています。惜しむらくは読者を驚かすことに偏重し過ぎ、怪奇状況を十分に描ききれていないことでしょうか。

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