The Red House Mystery

「赤い館の秘密」


A・A・ミルン


1921

★★★★

 アントニー・ギリンガムが友人ビル・ビヴァリーに会いに「赤い館」を訪れた瞬間、玄関ホールの中から一人の男が「ドアを開けてくれ!」と叫んでいる声が聞こえる。その男ケイリーは、部屋の中から銃声が聞こえたので、部屋に入ろうとしたが鍵がかかっていて中に入れず、外から叫んでいたらしい。アントニーとケイリーが窓から部屋に入ると、中では「赤い館」の当主の兄が殺されており、兄と一緒にいたと思われる当主マークはその姿を消していた。殺された兄はオーストラリアから今日館に着いたばかりで、マークは兄と会うことにあまり気が進んでいなかったことは館の住人が全員認めている。事情の全く解からないアントニーは、ビルをワトスン役にして、この事件の捜査に乗り出します。児童作家だったミルンは以前からミステリを愛読しており、いつか万人が納得できるミステリ小説を書こうとしていたそうです。その結果生まれたのが本書「赤い館の秘密」で、なるほどいたるところに巧妙な仕掛けがほどこしてあります。アントニーとビルの会話はとても軽妙で、調査の進行状況も適時判るようになっており、二人のみが知り得て読者には明かされない事実などもありません。惜しむらくは、中盤において大きな展開がないため読者に考える時間を与えてしまい、いくつかのトリックに気付かれる危険性があることでしょう。


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