Mystery Mile

「ミステリー・マイル」

マージェリー・アリンガム


1930

★★★
ROM叢書
小林晋訳

 アメリカ人のクラウディー・ロベット判事を狙った事件が次々と起き、息子のマーロウ・ロベットはアルバート・キャンピオンに救いを求めます。ロベット判事はシミスターと呼ばれるギャングに狙われていると考えられ、キャンピオンはロベット判事をギャングの手が届かないミステリー・マイルと呼ばれる村に連れて行きます。ミステリー・マイルは本土から一本の狭い道で結ばれた孤島のような小さな村で、ロベット判事を隠匿するには格好の場所でした。しかしロベット判事一行が着いたその夜、村に住んでいた牧師が謎の自殺を遂げます。そして翌日、ロベット判事が村にあった迷路のなかで忽然と姿を消してしまうのです。

 第二作The Crime at Black Dudleyで脇役として登場したアルバート・キャンピオンを初めて主役に担ぎ出した第三作です。本作でキャンピオンは冒頭から登場し、探偵役として事件の解決に挑みます。巻末の「箱の中のミステリ作家」を読むと判りますが、ミステリを書きたくなった著者がキャンピオンを仲間につけ、大衆冒険小説作法に則って書いたのが本作であり、結末の驚きよりも、読者にページをめくらせるための途中での驚きを優先しています。ミステリあり、アクションあり、ロマンスありと、楽しめること請け合いです。これまで翻訳された作品では見られなかった格好いいキャンピオンがここにはいます。

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