The Murder of Santa Claus

「サンタ殺し」

ターゲ・ラ・クール


1954

★★★
Privately Printed
1st English edition in Denmark

 雪景色にめぐまれたクリスマスの午後、ポワール氏のアパートに一通の電報が届きます。それはドランカード館に住むグウェンドリン夫人からで、殺人事件が起きたため至急来て欲しいとのことでした。殺されたのは夫のドランカード卿で、背中を短剣で刺されていました。手がかりはたった一つ、敷物の上に血で書かれたダイイング・メッセージだけでした。そして真夜中の12時ちょうど、家族や使用人を集めてポワール氏が告げた犯人の名は…。


 本書はデンマークのシャーロキアン、ターゲ・ラ・クール(Tage la Cour)が1952年に同国でドナルド・マクガイア(Donald McGuire)のペン・ネームで出版したものを、1954年に英米の友人達のために英訳し、自家製版した小冊子です。アガサ・クリスティに捧げられた本書は、読んで楽しいエルキュール・ポアロのパロディ短編で、ラール・ポーなるイラストレーターによる挿絵も5枚載っています。ポワール氏が現場に向かう前にチョコレートを飲もうと19軒の酒場に立ち寄ったり、マザー・グースの絵巻が出てきたりとパロディならではのおもしろさが満載です。極めつけは犯人で、読者をおちょくっているとしか思えませんが、これも著者の友人達を楽しませるための一興だったのでしょう。翻訳が『エラリイ・クイーンズ・ミステリマガジン』1959年12月号(通巻42号)に載っていますので興味のある方は探してみてください。訳注として、登場人物の名が掛け言葉になっていることが書かれています。例えば、ポワールはフランス語の梨で、俗語で「うすのろ」だそうです。

なお私が所有する本書は著者のサイン入りで、同じくシャーロキアンであるJames Montgomeryに捧げられています。

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