The Stalking Horse 「騙し絵の檻」 ジル・マゴーン 1987 ★★★ |
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創元推理文庫 中村有希訳 |
ビル・ホルトは幼なじみのアリソン・ブライアントと私立探偵マイケル・オールソップ殺しの罪で投獄されます――無実であるにもかかわらず。16年が経って仮釈放されたビルは真犯人を見つけるべく、事件当時彼やアリソンと親しかった現在のグレイストーン社の役員達を訪ねます。そして自分の記憶をもとに真相を探り出そうとするビルの前にジャンと言う名の女性記者が現れ、意気投合した二人は次々と新たな事実を探り当てます。
いったい何が「騙し絵」なのか?ただひたすらそのことを考えながら読み進めることでしょう。過去と現在が交錯しながら進む展開に最初は多少戸惑いますが、これが巧みに計算されたものであることが判った後には感嘆に変わります。非常に冷徹でハードボイルド調に行動していたビルが、ジャンと行動を共にするに従って徐々に優しさを取り戻すところなどはとても繊細に描かれており好感が持てます。ラストで明かされる「騙し絵」はさすがに見破ることはできず、ただただ驚くばかりです。著者はイギリスの現代ミステリ作家ですが、予想に反して非常にアメリカタッチな作品です。
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