2000年11月27日付け

 イカサマのトリックをひとつでも知ったら、もう何でもお見通しと思い込んでしまうのが素人の悲しさ。ひとつの作品を読み終える度にもう騙されないぞと思い込んでしまう読者を著者パーシヴァル・ワイルドは更にウラをかいて騙しに来ます。『悪党どものお楽しみ』は賭博師のビル・パームリーが次から次へとギャンブルのイカサマを暴いていく異色の短編集です。クイーンの定員No.79にも選ばれており、原書は稀覯本中の稀覯本と言われています。誰でも馴染みのあるトランプやルーレットでのため息が出そうなイカサマの数々を堪能下さい。

2000年10月08日付け

 『三人の名探偵のための事件』、『死体のない事件』と常に意表をつくアイデアを出してきたレオ・ブルースが、ついに結末のない事件を小説化しました。ご存じビーフ元巡査部長が今度は私立探偵となって依頼者の兄である容疑者の無罪をはらそうとします。しかし状況は容疑者を悪い方向へ導くものばかり。ビーフは独自の捜査で風変わりな事実や手がかりを見つけますが、すぐに真犯人につながるものはありません。果してビーフは容疑者を救うことができるのか?その驚愕の結末にしばらく凍り付いた、レオ・ブルースの最高傑作です。結末はちゃんとあります。

2000年8月20日付け

 隅の老人のようにじっとしていることも無く、ミス・マープルのように優雅に田園生活をしていることも無く、高級老人ホームに住むおばあちゃん達は自身の好奇心からだけで事件の真相を見つけるべくホームじゅうを歩き回ります。コリン・ホルト・ソーヤーの『老人たちの生活と推理』(創元推理文庫)はカリフォルニアにある老人ホームを舞台にした本格推理小説です。控えめだったひとりの老婦人がめった刺しにあって殺されます。果して真相を言い当てるのは警察かおばあちゃん達か?驚愕の結末は実に感動的です。

2000年6月17日付け

 収められた13の短編が全て不可能犯罪を扱った傑作短編集がエドワード・D・ホックの『サム・ホーソーンの事件簿T』(創元推理文庫)です。有蓋橋のなかでの消失、独房からの脱出、人ひとり入れるだけの小さな投票ブースのなかでの殺人など、どれも有り得ない状況から始まる不可思議な事件は、青年医師サム・ホーソーンによって次々と真相が明かされていきます。架空の聞き手にお神酒を勧めながらサム医師が事件を語るパターンをとっており、話のしめくくりで次の事件のさわりを話すのも楽しい趣向です。原書は1996年にCrippen&Landru社から発行されたDiagnosis: Impossible The Problems of Dr. Sam Hawthorneで、翻訳書には「長い墜落」が追加されています。

2000年3月25日付け

 2000年4月10日に新樹社よりC・デイリー・キング『タラント氏の事件簿』(中村有希訳)が発売になりました。「クイーンの定員」(No.91)にも選ばれている本書は、鍵のかかった部屋からの古書の消失や船上での人物消失、王道の密室殺人など不可能犯罪満載の本格ミステリ短編集で、ひとつひとつが独立した話でありながら、実は密かなつながりを持っています。最後の短編で探偵役のタラントはある行動に出るのですが、その続きは同じ新樹社から出版された『これが密室だ』(森英俊訳)に収録されている短編「危険なタリスマン」で読むことができます。

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