(1)
淡々と日々は過ぎていく
地底から地下水の流れる音が
聞こえてくる
心をひっかくような付点のリズム
わだかまっていたものが消え落ちた
わからないものは
わからないままにすることだ
(2)
何かが始まりそうだ
ほら 風の流れが変わってきた
香を運んでくる
記憶のある香だが思い出せない
思い出せない思い出こそが
大切な思い出かもしれぬ
(3)
一冊の本を読み始める
あらゆるものが
見えない言葉で書かれた本だ
と長田弘はいう
遠く川を見つめる
流れゆく果ての海へと
思いを巡らせる
人間は川のように
曲がったまま
まっすぐにはなれずに
死んでいく
連 想 詩 ーバッハ平均律による