last update 2002/8/26

育児休業に関する法律について

1育児休業法の改正について

 1995年、育児休業法に介護休業制度を導入する改正が行われ、法律の名称も「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(育児・介護休業法) に変わりました。この法律は、
1、育児休業と介護休業の制度を設ける
2、育児・介護を容易にするため勤務時間短縮等の措置を事業主に義務づける
3、育児や介護を行う労働者に対する支援措置を講ずる
の三点により、子供を育てたり家族の介護をする労働者の雇用の継続と再就職の促進を図り、職業生活と家庭生活との両立に寄与する ことを通じて、その福祉の増進と経済・社会の発展に資することを目的としている。

 2002年、さらに主に以下の点について改正が行われました。
1、育児休業や介護休業の申出や取得を理由とする不利益取扱いの禁止
2、育児又は家族介護を行う労働者の時間外労働の制限
3、勤務時間の短縮等の措置義務の対象となる子の年齢の引上げ
4、子の看護のための休暇の措置の導入
5、育児又は家族介護を行う労働者の配置への配慮義務


2育児休業の対象者(育児・介護休業法第2条1項、第6条1項但書)

 1歳未満の子を養育する男女労働者が、育児休業の対象者です。法律上の親子関係があれば実子のみならず、養子も含みます。育児休業は、原則として一人の子につき 一回だけしか取れないことになっているので、すでに一回育児休業を取ったことのある人は、例外を除いて、同一の子について育児休業はとれません。

3適用除外(育児・介護休業法第2条1項、第6条1項)

 法律により、日々雇用される者、期間を定めて雇用される者は、育児休業の対象から除外されています。 また、労使協定により、次の者を対象者から除外することができます。
(1)雇用されてから1年未満の者
(2)配偶者が常態として子を養育できる者
これについては、育児・介護則と告示で、配偶者が次のいずれにも該当する者と定めています。
イ、職業に就いていない者(育児休業中の者および1週の就業日が2日以下の者を含む)
ロ、負傷、疾病又は心身の障害により子を養育することが困難な状態でない者
ハ、産前6週間又は産後8週間でない者
ニ、休業申出に係る子と同居している者
(3)前(2)に掲げるものの他、合理的理由がある者
これについては、育児・介護則と告示および通達で、次のとおり定めています。
イ、休業申出があった日から起算して1年以内に雇用関係が終了することが明らかな労働者
ロ、1週間の所定労働日が2日以下の労働者
ハ、内縁関係の配偶者が常態として子を養育できる労働者

以上の者は、あくまで労使協定で定めた場合にはじめて適用除外できるにすぎず、労使協定で除外されないかぎり、夫と妻が同時に育児休業をとることも 配偶者が専業主婦(夫)である場合に育児休業をとることもできます。
また、このような労使協定が締結されていても、男性労働者の配偶者の産後8週間については、その配偶者は「配偶者が状態として育児休業に係る子を養育することができると 認められる労働者」に該当しないため(則第6条3号)、生まれた子について女性労働者は産後休業を、同時に男性労働者は育児休業を取ることができます。

なお、法に基づく育児休業は、期間を定めて雇用されるものには適用されませんが、労働契約の形式上期間を定めて雇用されている者であっても、 当該契約が期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態となっている場合には、育児休業の対象となります。 その判断に当たっては、指針の第2条第1号に規定する期間を定めて雇用される者に該当するか否かを判断するに当たっての事項を参考にしてください。


4育児休業の権利の性格(育児・介護休業法第6条)

事業主は、要件を満たした労働者の育児休業の申出を拒むことはできません。すなわち、育児休業の権利は、事業主が承認したり、許可したりすることによって 行使できる権利ではなく、資格のある労働者が適法な申出をすることだけで行使できる権利です。就業規則に定めがないにしても、育児休業をとる権利はあるのです。 育児休業については「原則として1ヶ月前の申出」という条件を満たせば、育児休業の時期や期間を、事業主の都合で変更することはできません。 通達は「事業主は、経営困難、事業繁忙その他どのような理由があっての適法な労働者の休業申出を拒むことは出来ず、また法第6条第3項及び法第7条第2項で認められる 場合を除き、育児休業の時期を変更することはできない」と明記しています。

5育児休業の申出と育児休業期間

(1)育児休業の期間の原則

育児休業期間が、原則として、子が出生した日から子が1歳に達する日(誕生日の前日)までの間で、 労働者が申し出た休業開始予定日までの期間です。
子を出産した女性については、産後8週間の休業が労基法で認められていますので、出産休業が終了した後に育児休業をとることになりますが、男性の場合は子の 出生した日から育児休業をとることができます。

(2)事業主による休業開始予定日の指定(育児・介護休業法第6条3項)

例外として労働者が休業開始予定日の1ヶ月前に休業申出をしなかった場合は、事業主は休業開始予定日を労働者の申出の日と異なる日に指定することができます。 特別の理由がなく1ヶ月前に休業申出をしなかった場合は、申し出た休業開始予定日から休業申し出後1ヶ月経過日までの間のいずれの日に指定できます。 労働省令で定める事由が生じた場合には、事業主は、休業申出があった日の翌日から1週間を経過する暇での間に休業開始予定日を指定できます。 育児・介護則9条は、次の自由を定めています。
イ、出産予定日前に子が出生したこと(男性が育児休業をとる場合)
ロ、休業申出に係る子の親である配偶者(以下「配偶者」という。)の死亡
ハ、配偶者が負傷又は疾病により子を養育することが困難になったこと。
ニ、配偶者が子と同居しなくなったこと。
休業開始日の指定は、申出の日から3日以内に、書面を交付して行わなければなりません。

(3)労働者による休業開始予定日の繰り上げ変更(育児・介護休業法第7条1、2項)

休業の申出をした労働者は、その後休業開始予定日の前日までに、前記育児・介護則9条の事由が生じた場合には、1回に限り休業開始予定日を早める変更をすることができます。 ただし、変更後の休業開始予定日が、変更の申出の翌日から1週間以内である場合には、事業主はその範囲内のいずれかの日を休業開始予定日として指定することができます。

(4)労働者による休業開始予定日の繰り下げ変更(育児・介護休業法第7条3項)

休業の申出をした労働者は、当初の休業終了予定日の1ヶ月前に申し出ることにより、1回に限り休業終了予定日を繰り下げる変更をすることができます。 これは理由を問わず、1ヶ月前に申し出れば当然に育児休業期間が延長されるものです。

(5)休業申出の撤回等(育児・介護休業法第8条1、2項)

休業の申出をした労働者は、休業開始予定日の前日までは、理由を問わず、その休業申出を撤回することができます。 しかし、いったん撤回すると、その子については、@配偶者の死亡A配偶者が負傷、疾病等により子を養育することが困難な状態になったこと、 B婚姻の解消その他の事情により配偶者が子と同居しないことになったなど特別の事情がない限り、再度の休業申出はできません。

(6)育児休業の終了(育児・介護休業法第9条2項)

育児休業は、労働者が申し出た休業終了予定日に終了しますが、その他に労働者の意思にかかわらず、次の場合には終了します。
イ、育児休業期間中に子の死亡等により子を養育しないこととなった場合
ロ、子が1歳に達した場合
ハ、育児休業中の労働者について産前産後の休業又は新たな育児休業が始まった場合

(7)法定を上まわる育児休業

育児・介護休業法が規定している育児休業の回数制限、期間の変更、申出の時期等は、すべて最低限度の条件ですから、就業規則や労使協定によって、 これを上まわる労働者の権利を定めることはできます。
この点について通達は、申出の時期を短くすること、労働者の希望により休業開始予定日を繰り下げ変更することや、規則の定める以外の理由で繰り上げ変更すること、 終了予定日の繰り下げをより柔軟に行うこと、一人の子について1回しか休業できないという制限などはすべて可能であるとしています。

6育児休業を理由とする不利益取扱い解雇の禁止

(不利益取扱いの禁止)
第10条
事業主は、労働者が育児休業申出をし、又は育児休業をしたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
育児休業の申出をしたり、育児休業をしたことを理由とする解雇は禁止され、そのような解雇は民事上無効です。例えば労働者が1ヶ月前に育児休業を申し出たのに対し、 事業主が、もう少し待ってくれといったけれども、労働者は休業してしまったという場合、事業主は職務命令違反としてその労働者を解雇することはできません。 通達は、休業申出または休業と因果関係がある解雇を禁止するのであって育児休業期間中の解雇をすべて禁止する趣旨ではないとしていますが、 育児休業申出後の解雇については、それ以外の解雇の正当理由が十分に立証されない限り無効ですし、その立証は、倒産による全員解雇の場合以外には、 ほとんど不可能と思われます。

2001年11月16日から、育児休業を理由とする解雇以外の不利益な扱いについても禁止されています。 指針の第2条第3号の規定で、その不利益取扱いの典型例として次のようなものを例示しています。ここに例示していない行為についても、 個別具体的な事情を勘案すれば不利益取扱いに該当する場合もありえます。

  1. 解雇すること。
  2. 退職又は正社員をパートタイム労働者等の非正規社員とするような労働契約内容の変更の強要を行うこと。
      勧奨退職や正社員をパートタイム労働者等の非正規社員とするような労働契約内容の変更は、労働者の表面上の同意を得ていたとしても、これが労働者の真意に基づくものではないと認められる場合には、これに該当します。
  3. 自宅待機を命ずること。
        事業主が、育児休業終了予定日を越えて休業することを労働者に強要することも含まれます。
  4. 降格させること。
  5. 減給をし、又は賞与等において不利益な算定を行うこと。
      休業期間中に賃金を支払わないこと、退職金や賞与の算定に当たり現に勤務した日数を考慮する場合に休業した期間分は日割りで算定対象期間から控除することなど、専ら休業期間は働かなかったものとして取り扱うことは、不利益な取り扱いには該当しません。ただし、休業期間を超えて働かなかったものとして取り扱うことは、これに該当します。
  6. 不利益な配置の変更を行うこと。
      配置の変更が不利益な取扱いに該当するか否かについては、配置の変更前後の賃金その他の労働条件、通勤事情、当人の将来に及ぼす影響等諸般の事情について総合的に比較考量の上、判断すべきものですが、例えば、通常の人事異動のルールからは十分に説明できない職務又は就業の場所の変更を行うことにより、その労働者に相当程度経済的又は精神的な不利益を生じさせることは、これに該当します。
  7. 就業環境を害すること。
      業務に従事させない、専ら雑務に従事させる等の行為は、これに該当します。

7育児休業中および休業後の労働条件

(育児休業等に関する定めの周知等の措置)
第21条
事業主は、育児休業及び介護休業に関して、あらかじめ、次に掲げる事項を定めるとともに、これを労働者に周知させるための措置を講ずるよう努めなければならない。

  1. 労働者の育児休業及び介護休業中における待遇に関する事項
  2. 育児休業及び介護休業後における賃金、配置その他の労働条件に関する事項
  3. 前2号に掲げるもののほか、厚生労働省令で定める事項
2   事業主は、労働者が育児休業申出又は介護休業申出をしたときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該労働者に対し、前項各号に掲げる事項に関する当該労働者に係る取扱いを明示するよう努めなければならない。

(雇用管理等に関する措置)
第22条
事業主は、育児休業申出及び介護休業申出並びに育児休業及び介護休業後における就業が円滑に行われるようにするため、育児休業又は介護休業をする労働者が雇用される事業所における 労働者の配置その他の雇用管理、育児休業又は介護休業をしている労働者の職業能力の開発及び向上等に関して、必要な措置を講ずるよう努めなければならない。

(1)労働条件の明示

育児休業をとると、休業中や復職後の労働条件がどうなるかは、労働者にとって重大な問題です。そこで育児・介護休業法は、労働者が安心して休業することができるようにし、また 復職後のトラブルを防止するために、休業期間中と復職後の労働条件をあらかじめ定め、明示するよう規定しています。
21条1項は、その職場全体に関する定めを設け、労働者に周知させる努力義務を事業主に課しています。
施行通達では、以下のとおり例示しています。
1号の「労働者の育児休業中における待遇に関する事項」とは、休業期間中の賃金その他の経済的な給付、教育訓練、福利厚生施設の利用等です。
2号の「育児休業後における賃金」とは、育児休業終了後の賃金の額及びその算定の方法等の意味であり、この賃金には退職金を含みます。「配置」は、復職後に従事すべき職務の内容及び就業の場所等です。
2号の「配置」とは、労働者の一定の職務に就けること、又は就けている状態をいい、従事すべき職務の内容及び就業の場所を主要な要素とする。この配置には、出向及び労働者派遣も含みます。
2号の「その他の労働条件に関する事項」とは、昇進、昇格及び年次有給休暇等に関する事項です。
3号の「厚生労働省令で定める事項」は、育児・介護則32条で、1,育児・介護休業法9条2項1号の事情(子の死亡等)により育児休業が終了した労働者の「労務の提供の開始時期」、2,労働者が育児休業期間に ついて負担すべき「社会保険料」を事業主に「支払う方法」の2つが定められています。
「労務の提供の開始時期」の取扱いについては、育児休業等の期間が終了した労働者にとっても即日出勤が難しい状況にあることが予想されることから、当事者間の合意による期間中であれば無給の休業としての取扱いをすることも許されると解されています。
21条2項は、1項の定めに基づく措置について、育児休業を申し出た本人に対し、その取扱いを具体的に明示することを、事業主の努力義務として定めたものです。 明示の方法は、育児・介護則33条で文書を交付することによって行うことと定められ、施行通達で、原則として労働者が休業申出をした日からおおむね2週間以内(申出から休業開始予定日までの期間が2週間に満たない場合は休業開始予定日まで)に、取扱いを明らかにした書面を 交付することされています。

(2)就業規則に定める事項

21条1項は、休業中と休業後の労働条件に関する定めおよび周知を、事業主の努力義務としていますが、育児休業は、労基法89条1項1号で就業規則に定めなければならない事項としている 「休暇」に含まれますので育児休業の対象となる労働者の範囲等の付与用件、育児休業取得に必要な手続、休業期間については、就業規則に記載する必要があります。
記載方法としては、「育児・介護休業法の定めるところにより育児休業を与える」という定めがあれば記載義務は満たしているとされています。
その他就業規則の絶対的必要記載事項としては、育児休業中に賃金が支払われるのであればその決定、計算及び支払いの方法、賃金の締切り及び支払いの時期、時差出勤制度の始業及び終業時刻等が あります。賃金に関する事項は、育児休業期間等であると否とを問わず同様である場合には、それらに関する事項を記載しなければなりません。

(3)育児休業中の賃金・育児休業給付金

支給対象 満1歳未満の子を養育するための育児休業をする被保険者。ただし、休業開始日前2年間に、雇用保険のみなし被保険者期間が通算して 12ヶ月以上ある労働者
育児休業基本給付金休業した1月について 休業前賃金*30%
育児休業者職場復帰給付金育児休業終了後6ヶ月間雇用保険の被保険者として雇用された場合休業した1月について 休業前賃金*10%

育児休業中の賃金については、育児・介護休業法でとくに規定せず、労使の話し合いに委ねられています。雇用保険法第61条の4、5によって、次のとおり休業前賃金の40%相当額の 育児休業給付金が支給されます。
労使の話し合いによって、育児休業中の賃金を会社が負担することにした場合、育児休業中の賃金額の80%を超えると、育児休業給付金は支給されないことになっています。逆に、 その賃金と育児休業給付金の合計金額が休業前賃金の80%を超えなければ、給付金は減額されません。つまり会社が60%の賃金を支払い、雇用保険から20%の給付金を受け、 育児休業中合計80%の所得保障が可能になるのです。
育児休業をとるすべての男女労働者に休業前賃金40%相当額の所得を保障する給付制度は重要ですが、これは最低基準であって、労使交渉でこれに賃金を上乗せし、安心して育児休業をとれるようにすることが望まれます。

(4)育児休業中の社会保険料

健康保険法第71条3項2号、厚生年金保険法第81条2号により、育児休業をしている被保険者を使用している事業主が保険者に申し出た場合、その申出をした日の属する月からその育児休業が終了する日の属する月の前月までの期間について、 被保険者負担分及び事業主負担分ともに健康保険料と厚生年金保険料は免除されるます。給付も保険料を支払ったものとして計算されます。
ただし、法定期間を超える子の1歳以降の育児休業(育児休業に準じる措置による)については、免除されません。 雇用保険料については、育児休業給付金は賃金ではないので雇用保険料の支払い義務はありません。
その他、住民税について、一定の条件のもとで、最長1年間納税を猶予する措置の適用があります。

(5)原職復帰

育児休業する者にとって、賃金の問題と同様に大きな問題は、もとの職場に復帰できるかどうかです。 育児休業は、雇用契約を変更することなく休業する権利ですから、職場復帰後も、職務や勤務場所に変更はないのが原則です。 一般的には、以下のいずれにも該当する場合に原職復帰相当職と評価されます。
  1. 休業後の職制上の地位が休業前より下回っていないこと
  2. 休業前と休業後とでは職務内容が異なっていないこと
  3. 休業前と休業後とでは勤務する事業所が同一であること
指針の第2条第7号の規定では、「原則として原職又は原職相当職に復帰させることが多く行われている ものであることに配慮すること」と、緩やかな表現になっていますが、それは長時間の育児休業中に、企業の組織変更や技術革新などがあり、厳密な意味での原職復帰が困難な場合があることを考慮したものと思われます。 したがって、合理的な理由がない限り原職以外への配置転換は行うべきでなく、やむを得ない理由で配置転換する場合でも、それは休業した労働者にとって不利益な取扱いになるものであってはなりません。 なお後述のとおり職場復帰のための教育、訓練は、事業主の努力義務とされています。

(6)育児休業後の賃金等

法第10条で、「不利益な取扱いをしてはならない」という原則を定めているので、育児休業後の賃金その他の労働条件もこの原則に基づいて定めるべきです。
通達は、「不利益に取り扱う」とは、「賃金の大幅な減額、長時間の昇給停止、著しい精神的、経済的負担を伴うと考えられる配置転換等、育児休業を労働者の権利とした 法の趣旨を没却するような取扱いが典型である」とし、多少の不利益取扱いは許されるとの誤解を生じかねない表現になっています。
しかし、長時間の育児休業後、明らかに労働能力が低下したなどの特別な事情がない限り、労働条件の引き下げは認められません。育児休業の権利を行使したこと意外に何らの合理的な 理由もないのに、賃金の減額や昇給停止、精神的、経済的負担を伴う配置転換等の不利益取扱いは、法で認めた権利行使を抑制するものであり、公序良俗に反し無効というべきです。

(7)代替要員

育児休業をとる労働者にとって、休業期間中自分の仕事はだれがやるのか、まわりの人たちに迷惑がかかるのではないかという心配があります。そのため制度があっても実際には休めないということも少なくありません。 この点に関して育児・介護休業法22条は、休業申出および休業後の終業が円滑に行われるようにするための労働者の配置その他の雇用管理に関し必要な措置を講ずるよう、事業主に努力義務を課しています。 施行通達では、その具体的な措置として、事業所の労働者全体の配置、他の労働者に対する業務の再配分、人事ローテーション等による配置転換、派遣労働者の受入れおよび新たな採用等のうちの適切な措置をとることによって、 当該育児休業をする労働者が行っていた業務を円滑に処理する方策等である、としています。
なお、育児休業取得者が、育児休業終了後、原則として原職等に復帰する旨の取扱いを就業規則等に規定した上で育児休業取得者代替要員を確保し、かつ、育児休業取得者を原職復帰させた事業主に対する助成として、 「育児休業代替要員確保等助成金」が2002年に創設されています。

(8)職場復帰のための教育、訓練

育児・介護休業法22条は、育児休業をとった労働者の職場復帰が円滑に行われるようにするため、休業をしている労働者の職業能力の開発および向上等に関し必要な措置を講ずることを、事業主の努力義務としています。 教育、金廉を受けるかどうかは、育児休業をする労働者の選択にまかされ、強制はできません。
なお、これを行う事業主にたいし、「育児・介護休業者職場復帰プログラム実施奨励金」が実施されています。

(9)育児休業と年次休暇(労基法39条7項)

労基法39条に規定されている年次有給休暇は、全労働日の8割以上出勤した労働者に与えるものとされています。育児休業を出勤しなかった日とすると、育児休業をとった年の翌年は年次有給休暇をとる資格がないことになるので、 労基法の93年改正により、育児休業をした期間は、年次有給休暇の規定の適用については、出勤したものとみなすことになりました。

8勤務時間短縮等の措置

(勤務時間の短縮等の措置等)
第23条
事業主は、厚生労働省令で定めるところにより、その雇用する労働者のうち、その一歳に満たない子を養育する労働者で育児休業をしないものにあっては労働者の申出に基づく勤務時間の短縮その他の当該労働者が 就業しつつその子を養育することを容易にするための措置(以下この項及び次条第1項において「勤務時間の短縮等の措置」という。)を、 その雇用する労働者のうち、その一歳から三歳に達するまでの子を養育する労働者にあっては育児休業の制度に準ずる措置又は勤務時間の短縮等の措置を講じなければならない。

(1)措置の具体的内容

育児・介護則34条は次の措置を定めています。これらの措置を少なくとも1つ以上講じなければならないという義務規定です。
  1. 短時間勤務制度
    イ、1日の所定労働時間を短縮する制度
    ロ、週又は月の所定労働時間を短縮する制度
    ハ、週又は月の所定労働日数を短縮する制度(隔日勤務、特定の曜日のみの勤務等の制度)
    ニ、労働者が個々に勤務しない日又は時間を請求することを認める制度
  2. フレックスタイム制
  3. 始業・終業時刻の繰上げ・繰下げ
  4. 所定外労働をさせない制度
  5. 託児施設の設置運営その他これに準ずる便宜の供与
短時間勤務制度は、所定労働時間が7時間以上の場合は、1時間以上の短縮となる制度です。また、労基法の育児時間とこの短縮勤務制度は、 別に措置されるべきものとされています(通達)から女性は両方を重ねて請求できます。
「これに準ずる便宜の供与」には、労働者からの委任を受けてベビーシッターを手配し、その費用を事業主が負担すること等が含まれます。
なお、これら上記の措置の代わりに育児休業の制度に準ずる措置を講じても差し支えありません。

(2)対象者

これらの措置を受けることができる労働者は、 3歳未満の子を養育する男女労働者で育児休業をしないものですが、育児休業をした後に短時間勤務制度を利用するなどの組み合わせはもちろんできます。夫と妻が同時にこの制度の 適用を受けることも可能で、労使協定によってもこれを除外することはできません(通達)。 また、育児休業と異なり、法律によって適用除外されているのは「日々雇用される者」だけで、「期間を定めて雇用される者」も これらの適用を受けられます。

(3)不利益取扱い等

指針の第2条第9号は、これらの措置の適用を受けることを申し出たことや適用を受けたことを理由として、「当該労働者に対して解雇その他の不利益な取扱いをしてはならない」と定めています。
また、「当該措置は、労働者が希望する期間を超えてその意に反して適用されるものであってはならない」とも定めています。
短縮勤務制度は、働きながら育児を容易にする、男性にも利用しやすい制度です。しかしこれらの制度の利用はあくまで労働者自身の選択によるべきで、事業主のほうから強要するようなことは許されません。

9 幼児期の子を養育する労働者に対する措置

(三歳から小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者等に関する措置)
第24条
事業主は、その雇用する労働者のうち、その三歳から小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者に関して、育児休業の制度又は勤務時間の短縮等の措置に準じて、必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
3歳に達した後も小学校へ入学するまでの幼児期は、育児のための時間が必要なので、3歳未満の子を養育する労働者の育児休業や勤務時間の短縮等の措置に準じ、必要な措置を講ずるよう事業主に努力義務を課したものです。 準じた措置とは必ずしも同一の措置である必要はありませんが、本人の申出に基づくものであることおよび男女が対象になることなど、考え方は共通にすべきものです(通達)。 勤務時間の短縮等の措置については、例えば、対象となる労働者の子の年齢が3歳までは短時間勤務の制度(1日の所定労働時間を短縮する制度)、3歳から小学校就学の始期に達するまでは所定外労働をさせない制度を設けるなど、 子の年齢によって措置を組み合わせることも可能です。

10 子の看護のための休暇の措置

(子の看護のための休暇の措置)
第25条
事業主は、その雇用する労働者のうち、小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者に関して、労働者の申出に基づくその子の看護のための休暇(負傷し、又は疾病にかかったその子の世話を行う労働者に対し与えられる休暇 (労働基準法第39条の規定による年次有給休暇として与えられるものを除く。)をいう。)を与えるための措置を講ずるよう努めなければならない。
看護休暇について、事業主に小学校以前の子の看護のための休暇を導入するよう努力規定を定め、指針で看護休暇の日数について5日の範囲で措置を講ずるよう配慮を求めています。 子の看護のための休暇制度は、基本的には、各企業ごとに労使で相談し、労働者が取得可能な日数等を定め、制度の導入を行うものです。
なお、2002年4月に看護休暇制度導入奨励金が創設されています。

参考 厚生労働省『〜育児・介護休業法が改正されました〜育児・介護休業法のあらまし』、『労働法令通信2002.5.8』