妊娠中・産褥期に関する法律について

1妊産婦に係る危険有害業務の就業制限(労働基準法第64条の5)

使用者は妊娠中の女子及び産後一年を経過しない妊産婦を、重量物を取り扱う業務、有害ガスを発散する場所における 業務その他妊産婦の妊娠、出産、哺育等に有害な業務に就かせてはならない。

2妊娠中の軽易業務転換(労働基準法第65条第3項)

使用者は、妊娠中の女子が請求した場合においては、他の軽易な業務に転換させなければならない。
原則は、妊娠した女性から軽易な業務につきたいと、特定の業務を指定して申し出れば、使用者はその業務に配置替えする義務があります。
ただ、通達で、「原則として女子が請求した業務に転換させる趣旨であるが、新たに軽易な業務を創設して与える義務まで課したものではない」といってます。
例外として、軽易な業務がない場合、新たに軽易な業務を創設して与える義務まで課したものではない とされてますが、この場合でも、使用者は軽易業務転換の請求を拒否できるとか、軽易な業務はないから、休むよう強制できるわけではありません。
同じ業務の中の重労働部分をはずしたり、仕事量を減らすなど仕事のやり方をかえたり、休憩時間を多くするなどの措置はできるはず。

3妊産婦の変形労働時間制の制限(労働基準法第66条第1項)

使用者は、妊産婦が請求した場合においては、一ヶ月単位の変形労働時間制、一年単位の変形労働時間制、及び、一週間単位の非定型的労働時間制の 規定にかかわらず、一週及び一日の法定労働時間を超えて労働させてはならない。

4妊産婦の時間外労働、休日労働、深夜業の制限(労働基準法第66条第2、3項)

使用者は、妊産婦が請求した場合においては、時間外労働をさせてはならず、又は休日に労働させてはならない。 使用者は、妊産婦が請求した場合においては、深夜業をさせてはならない。

5妊娠中及び出産後の健康管理に関する措置(1998年4月1日施行 改正男女雇用機会均等法)

(1)通院休暇(男女雇用機会均等法第22条)

事業主は、労働省令で定めるところにより、その雇用する女性労働者が母子保健法の規定による保健指導又は健康診査を受けるために必要な時間を確保できる ようにしなければならない。
母子保健法10条および13条は、都道府県知事は妊産婦に対して、保健指導、健康診査を自ら行い、又はこれらの者が受けることを勧奨しなければ ならないとしていますが、女性労働者の場合は、受診の時間を確保することが困難な場合があるので、1998年4月1日から必要な時間の確保を事業主に 義務づけています。今回の改正でこれらの措置は事業主の努力義務から義務規定になったのは重要です。
母子保健法に基づく通達は、妊産婦の受診すべき回数について、次の基準を定めています。
※妊娠週数は、最終月経の第1日目を基準にして最初の1週を0週として数えます
妊娠週数 期 間
妊娠23週(7月)まで 4週間に1回
妊娠24週(8月)から妊娠35週(9月)まで 2週間に1回
妊娠36週(10月)から出産まで 1週間に1回
産褥後1ヶ月頃 1回


ただし、医師などが特に必要と認める場合にはその指示された回数によるものとされています。また妊娠や分娩による疾病のために特別の受診が 必要とされる場合にも、必要な通院が確保されなければならないことはいうまでもありません。
事業主は、妊産婦から請求された場合には、勤務時間中に、受診のために必要な時間を与えなければなりません。 付与すべき時間数は、@健康診査の受診時間、A保健指導を受ける時間、B医療機関又は助産所等での待ち時間、 C医療機関等への往復時間、をあわせた時間です。
この規定は会社に配慮を求める努力義務という強制力のない規定でしたが、1998年4月1日からは すべての義務づけられることになります。
しかし、時間を配慮しなければならないという義務を使用者にかしただけで、 通院休暇を有給、あるいは無給の扱いにするかは使用者の判断に委ねられています。 なお、公務員については、人事院規則10−7によって、妊娠中又は出産後1年以内の通院休暇を認めています。

(2)通勤緩和、勤務の軽減(男女雇用機会均等法第23条)

事業主はその雇用する女性労働者が前条の保健指導または健康診査に基づく指導事項を守ることができるようにするため、 勤務時間の変更、勤務の軽減等必要な措置を講じなければならない。
母子保健法16条は、妊産婦が保健指導又は健康診査を受けた場合、それを担当した医師等は、その都度母子健康手帳に必要な事項を記載することになっており、 改正均等法23条は、女性労働者がその指導事項を守ることができるよう事業主に一定の措置をとることを要請したものですが、今回の改正で事業主の義務になりました。
通達は、「本条にいう必要な措置の内容としては、通勤ラッシュ時をさけるための時差出勤等の方法による勤務時間等の変更、勤務場所の変更、勤務時間の短縮等の 方法による勤務の軽減、休養室の整備などが含まれる」としています。

◆措置の具体的内容
通勤緩和 時差出勤 始業時間及び就業時間に各々30分〜60分程度の時間差を設けること
労働基準法第32条3に規定するフレックスタイム制度
勤務時間の短縮 勤務時間の短縮については、1日30分〜60分程度の時間短縮
交通手段・通勤経路の変更 混雑の少ない経路への変更
休憩 休憩時間の延長
休憩回数の増加
休憩時間帯の変更
休養室の整備

また、事業主が、妊娠中及び出産後の女性労働者に対して、母性健康管理の措置を適切に 講じるために、医師の指導事項を伝達するための方法として、指針に 「母性健康管理指導事項連絡カード」の利用に努めるよう定められました。
公務員については前期人事院規則で通勤緩和などが定められています。

(3)妊娠障害休暇(男女雇用機会均等法第23条)

妊娠、出産にともなって生ずる各種の症状等については、医師等の具体的な指導に基づいて具体的な措置をとることも、23条の要請するところです。 各種の症状等に対応する一応の措置内容は次の通りとされています。
◆妊娠中の症状等に対応する処置
  症 状 等 措 置 内 容
つわり 妊娠初期に現れる食欲不振、吐き気、胃の不快感、胃痛、嘔吐などの症状。 一般に妊娠12週(第4月)頃に自然に消失する場合が多い。 悪臭がする、換気が悪い、高温多湿などのつわりの症状を憎悪させる環境における作業の制限。
体重が1週間に2kg前後減少する場合、尿中ケトン体が陽性の場合、妊娠12週を過ぎても症状が軽快せずに 残る場合
勤務時間の短縮
妊娠悪阻 つわりの強いもので食物摂取が不能になり、胃液血液等を混じた嘔吐が激しく 全身の栄養状態が悪化する。脳症状(頭痛、軽い意識障害、めまいなど) や肝障害が現れる場合がある。 体重が1週間に3〜4kg減少する場合、尿中ケトン体が(2+)以上を示す場合、 脳症状や肝機能障害(GOT、GPTが100IU/dl以上)を示す場合
休業(入院加療)
妊娠貧血 妊娠中の血液量の増加により、血液中の赤血球数又は血色素量が相対的に減少するもので、 顔色が悪い(青白い)、動悸、息切れ、立ちくらみ、脱力感などの症状が現れる場合がある。 血色素量9g/dl以上11g/dl未満の場合
負担の大きい作業の制限または勤務時間の短縮
血色素量9g/dl未満の場合
休業(自宅療養)
子宮内胎児発育遅延 子宮内において胎児の発育が遅れている 胎児の推定体重が正常の発育曲線の正常限界より小さい場合
負担の大きい作業の制限、勤務時間の短縮又は休業 (自宅療養又は入院加療)
切迫流産
(妊娠週22週未満)
流産しかかっている状態。出血、褐色のおりもの、下腹部の痛み、 下腹部の張りが徴候となる。 休業(自宅療養又は入院加療)
切迫早産
(妊娠週22週以降)
早産しかかっている状態。出血、下腹部の痛み、 下腹部の張り(周期的又は持続するもので、安静にしても治らないもの)、 破水感、自覚する胎動の減少などが徴候となる。 休業(自宅療養又は入院加療)
浮腫
(むくみ)
起床時などに、下肢、上肢、顔面などに次のようなむくみが認められ、 かつ1週間に500g以上の体重増加がある場合。妊娠後半期(妊娠週20週以降) に生じやすい。 軽症(浮腫が全身に及ばない)の場合
負担の大きい作業、長時間にわたる立作業、同一姿勢を強制される作業の制限または勤務時間の短縮
重傷(浮腫が全身に及ぶ)の場合
休業(入院加療)
蛋白尿 尿中に蛋白が現れるもので、ペーパーテストにより検査する場合は連続して2回以上 陽性の場合を、24時間尿で定量した場合は、30mg/dl以上を、蛋白尿陽性という。 軽症(30mg/dl以上200mg/dl未満)の場合
負担の大きい作業、ストレス・緊張を多く感じる作業の制限または勤務時間の短縮
重症(200mg/dl以上)の場合
休業(入院加療)
高血圧 自覚症状として、頭痛、耳鳴り、ほてりなどが生ずることもあるが、 自覚されないことも多いので、定期健診時、職場、家庭等で血圧を測定することが必要である。 高血圧が認められたら数時間安静後再検して確認する。 軽症(最高血圧140mmHg以上160mmHg未満又は最低血圧90mmHg以上110mmHg未満)の場合
負担の大きい作業、ストレス・緊張を多く感じる作業の制限または勤務時間の短縮
重症(最高血圧160mmHg以上又は最低血圧110mmHg以上)の場合
休業(入院加療)
妊娠前から持っている病気 妊娠により症状の悪化が見られるもの 負担の大きい作業の制限、勤務時間の短縮又は 休業(自宅療養又は入院加療)
妊娠中にかかりやすい病気 静脈瘤 下肢や陰部の静脈がふくれあがったもので、痛み、歩行困難などが生ずることがある。 妊娠後半期に起こりやすい。 症状が著しい場合
長時間にわたる立作業、同一姿勢を強制される作業の制限または横になっての休憩
外痔核の腫れによる痛みや排便痛、排便時出血。 症状が著しい場合
長時間にわたる立作業、同一姿勢を強制される作業の制限または横になっての休憩
腰痛症 子宮の増大、重心の前方移動、ホルモンの影響等により生ずる腰部の痛み。 症状が著しい場合
長時間にわたる立作業、腰に負担のかかる作業又は同一姿勢を強制される作業の制限
膀胱炎 細菌感染等による膀胱の炎症。尿意が頻繁となり排尿痛や残尿感がある。 症状が著しい場合
負担の大きい作業、長時間拘束される作業又は寒い場所での作業の制限
高熱を伴った腎盂・膀胱炎の場合
休業(入院加療)
多胎妊娠 複数の胎児が同時に子宮内に存在する状態。 切迫流早産や子宮内胎児発育遅延を起こしやすい。 双胎の場合
妊娠26週以降、必要に応じ負担の大きい作業の制限又は勤務時間の短縮
三胎以上の場合
特に慎重な管理を必要とする。


◆産後の症状等に対応する措置
  症 状 等 措 置 内 容
回復不全 産後長期にわたって全身状態の回復が不良なもの。 負担の大きい作業の制限、勤務時間の短縮又は休業(自宅療養)