実践・エルフ語講座
第三回「テングワール その1」
いよいよ第三紀の共通文字、テングワールに入ります。
テングワールはエルダール達によって作られ、ノルドール達によって中つ国へ伝えられました。
第三紀には共通語と共に広く使われました。
テングワールは子音を表わす文字の体系であって、それぞれは固有の音を持ちません。
この文字表をどのように子音にあてはめるかは、種族・地方により違っていました。
このことが、テングワールの理解をむずかしくしています。
共通語の場合の子音と文字との対応を、表1に示します。
各文字の左上にあるのが文字番号、右が発音、下にあるのが文字の名前です。
それぞれの文字には名前がついています。たとえば文字番号1の文字の名はtinco(金属)です。
この名は「フルネーム」と呼ばれ、どの種族の間でも共通でした。
このことは互いに子音の表記法が違っているため、文字を呼ぶ言葉が必要だったことを示しています。
ところで、このフルネームは全て上エルフ語(クゥエンヤ)です。名の最初の文字が、クゥエンヤにおいてその文字のあらわす音です。
ただし、語頭にありえない音や結合の場合は、その文字の母音のすぐ後の子音の音を表わしました。
ですから、クゥエンヤにおける文字と子音の対応は次のようになります。
(文字は文字番号で示します)
1−t 2−p 3−c(k) 4−q(k)
5−nd 6−mb 7−ng 8−ngw
9−th 10−f 11−n 12−hw
13−nt 14−mp 15−nc 16−ngw
17−n 18−m 19−n(ng) 20−nw(ngw)
21−r 22−v 23−y 24−v(w)
25−r 26−rd 27−l 28−ld
29−s 30−s 31−z 32−z
30−hy(h) 34−hw 35−y 36−w
(注1)NO11は、摩擦音のch(独語のbuchのch)を表わしていたときは、harmaと呼ばれていたが、
chが語頭で無声のh(houseのh)になってくると、ahaという名が用いられるようになった。
無声のhを表わすのに、上エルフ語では|を使い、これをhalla(高い)と呼んだ。
この記号は子音の前において、その子音が無声音であることを示した。
無声音のvやl(26や28)は上エルフ語ではhallaによって書くのが普通だった。
(注2)NO33の文字を独立したhに使うことが多くなると、hyを示す場合は付随のyを示す記号をつけることが多くなった。
(注3)NO31のはもとはといったが、zの音が21に吸収された。
esseの名は、このNO33が上エルフ語によくあるssの音を表わすのに用いられるようになったことから起こった。
(注4)NO34は、上エルフはhwの音を示す文字(NO12)をすでに持っていたため、灰色エルフのhwと呼ばれた。