患者さんの笑顔


患者さんの笑顔、僕にとってこれほどうれしい事は他にない。〜が痛い、辛い、凝っているなどの症状を訴えて来院され、帰る時は「ウソのように楽になった」、「おかげさまで」などと言って笑顔で帰る。その姿を見る時、「ああ、この仕事をしてて本当に良かった」と思う。

逆に、「まだ痛いですよ」、「全然良くならない」なんて言われてしまったら、ガッカリしてしまう。治療中は、なるべく患者さんには笑顔で接するようにしているが、実は真剣勝負なのだ。格闘技では、相手をKOし、相手の泣きっ面を見れば良いわけだが、治療の場合は、痛みや凝りをKOして、患者さんの笑顔を見なければ敗れた事になる。

新患の方が治療院に入って来られた時は、特に緊張する。以前、僕は空手をやっていたが、試合の前には震えるほど恐かった。その時先輩が「勝て!相手を殺したっていいんだ」、なんて気合を入れてくれた。いざ試合が始まってしまえばそれほどでもないが、その1分前なんかはもうそこから逃げ出したい気分だった。

患者さんが悪い症状だったら、なにかその時にもの凄く強そうな相手に睨まれているような気分と同じ感覚が心に走る。患者さんが入ってこられたら、すぐにその顔色、歩き方、口調、姿勢などをすばやく観察する。もう戦いはその時から始まっているのだ。問診をして、着替えをしてもらい治療に入る。僕は患者さんの訴えは良く聞く。だが、それだけで治療してしまってはいけないのだ。何故だ?、と思うだろ。

「あそこが痛い」、「ここが痛い」と患者さんは訴えてくる「ああ、そうですか」と納得して、その部分だけしか治療しなければ、当然本当には良くならない。もちろん、一時的には良くなるかもしれない。しかし、人間の体はそれぞれがバラバラではないのだ。例えば、腰だけが痛いという人がいても、そこだけが悪いという事は少ないのだ。首が悪かったり、内臓が疲れていたり、そういう本人が訴えなくても悪い部分は治療しなければいけない。そうでないと、草取りをした時上だけ刈って根を残しておくのと同じ状態になってしまう。

そういう意味で、僕は「体に聞く」。本人の言葉よりも、体の訴えに耳を傾けるようにしている。 さあ、今日も患者さんの笑顔を見れるようにがんばっていこうと思う。



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