オステオパシーのテクニック PART1 〜頭蓋仙骨治療〜


これから数回に分けて私が良く使っているオステオパシーのテクニックをみなさんにご紹介します。今回は頭蓋仙骨治療についてです。

頭蓋仙骨治療とは、脳脊髄液の流れを調整し、自然治癒力を高めようとする治療法です。このテクニックを考えたDr.ジョン・E・アプレジャーは、1971年に脊髄硬膜の手術の助手をしている時、硬膜がリズミカルに動いていることに気づき、その後にいろいろ研究して頭蓋仙骨治療を作り上げました。

頭蓋仙骨治療のメカニズムについて簡単に説明します。頭蓋骨はひとつの骨ではなく、23個の骨が組み合わさって頭の形を作っています。西洋医学では頭蓋骨は動かないとされていますが、オステオパシーでは呼吸とともにそれぞれの骨が固有の動きをすると考えられています。訓練された手の感覚を持つ治療家は、普通の人にはわからないこの動きを感じ取ることができます。何らかの原因により本来動いていなくてはならない頭蓋骨が動かなくなってしまうと、脳を圧迫してしまいます。それが脳神経を圧迫してしまい、その神経支配の所に異常が出る場合もありますし、硬膜(脳と脊髄を保護するための硬い膜)は仙骨(骨盤の中央、背骨の下端にある骨)の方まで繋がっていますから、その間のどこかに異常が出る場合もあります。その動きに異常をきたしてしまっているのを手で触って検査し、異常を見つけたらそこを治療します。頭蓋骨は仙骨と密接な関係があり、そのバランスが崩れるとさまざまな障害を引き起こします。背骨や骨盤の歪みを治しただけでは解決しない症状は、頭蓋骨を治療すると改善する場合があります。

脳と脊髄は三層の膜で包まれています。脳についている軟膜、その上にクモ膜、その上に硬膜があり、これは成人になると頭蓋骨の硬膜とくっつき、一枚の膜のようになります。クモ膜と軟膜の間にクモ膜下腔があり、そこに脳脊髄液が流れています。硬膜は脳だけでなく脊髄をも覆っていて、脳の一時呼吸(肺呼吸ではなく、脳の動きのこと)の時に脳脊髄液が仙骨部まで循環するようになっています。硬膜は頭蓋と上部脊椎まで付着し、あとは仙骨に付着します。その間の脊髄には付着していません。ですから、仙骨がずれると上部頸椎や頭蓋骨に影響を及ぼしますし、その反対もあります。

頭蓋仙骨治療は、頭痛やめまい、耳鳴り、眼精疲労、顎関節症、冷え性など背骨を調整しただけでは取れないさまざまな症状の改善に効果があります。また、病院で検査をしてもどこにも異常がないのに調子が悪い、といった場合にも有効です。以前、つまずいて転んで頭を地面に強くぶつけてしまったという患者さんがいらっしゃいました。レントゲンやMRIで検査しても頭蓋骨や脳には何の異常もありませんでしたが、それ以来耳鳴り、頭痛、肩こりに悩まされている、ということでした。私が頭を触ってみたところ、頭の後ろにある後頭と耳の周りにある骨の側頭骨に問題がある事がわかりました。頚椎もズレていたので、首を先に治してから頭蓋骨を調整したところ、初回で頭痛が消え、3回で耳鳴りは普段気にならない程度に落ちついたそうです。

また、頭蓋仙骨治療には深いリラックス効果があり、自律神経の問題や精神的な問題にも効果的です。現在体の不調や痛みはないがより健康になりたい、という方にもお勧めです。

美容目的の頭蓋骨の矯正のお問い合わせをいただくことがあります。頭蓋骨を調整すると顔の輪郭が変わることがありますが、これはあくまでも二次的なものであり、本来の目的ではありません。治療する必要がない頭蓋骨を美容目的で動かす事は大変危険な事です、特に口の内をいじるテクニックを下手に使うと取り返しのつかない事になる可能性がありますので、充分注意が必要です。



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